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夜間中学その日その日 (245)   守口夜間中学 白井善吾

夜間中学の学習より天体の動きが早い!!

「いったい何十年ぶりだったろうか。小学2、3年の頃だったかな、ガラスの切れはしにローソクで黒くいぶして、友だち2、3人と仲良く首の痛いのを我慢して空を見上げたものだった。あれから75年の歳月、夢のごとく流れた。今でも優しかった先生のお顔が目に浮かぶ。君たちの時代に、金環日食が見えるから身体を大切にせよ。その教えて下さった先生は戦争で亡くなった。金環日食を見ていると涙が溢れてきた。先生に捧ぐ」


金環日食を見たときの感想を一人の夜間中学生はこのように書いている。金環日食を眺めても、分厚い時間と、思い出の詰まった経験を解きほぐしながら、夜間中学の学びと向き合っているんだ。その想いを新たにした。
日食と月食のちがい、宇宙の大きさ、その中で串団子のように、太陽―月―地球の順で一直線に並んだとき、おきるのが日食。太陽―地球―月の順に並ぶのが月食。満月のとき起きるのは?新月のとき起きるのは?旧暦の書いてあるカレンダーを見比べながら、そのことを確かめた。金環日食のあった5月21日は旧暦の4月1日。部分月食のあった6月4日は旧暦の4月15日である。
24節気にめっぽう強い夜間中学生がいる。中国残留婦人の2世だ。6月6日は「芒種」だと黒板に書くと、彼は今年は6月5日だという。カレンダーで確かめると、間違いない。さすがだ。この頃、農作業は大変忙しかったと黒龍江省の故郷を思い出しながら語った。「芒」とは、「のぎ」とも言って稲穂などの穀に付いている刺状のもののこと。「のぎへん」の「禾(のぎ)」のことだ。穀物の種をまく季節を現している。長い冬が終わり、大地は一面の緑に変る。五穀(米、麦、粟、豆、黍など)のタネをまき、雑草に負けないように作物を育てるのだ。「五穀は中国語では五谷といいます」。故郷の季節が身体に染み付いているのかもしれない。
 話にひきつけられて、私も思い出した。小学4,5年の頃、ゆすら梅の赤い実がたわわに実り、脱穀した麦をリヤカーに載せ、家に戻り、麦をおろして、そのゆすら梅のみを口に含み、小さなタネを道に吐き出しながら、また田んぼに急いだのも今頃であった。麦を収穫し終えると、田を耕し、水を入れ、田植えに取り掛かる。百姓にとって、猫の手も借りたい時期だ。祖母が、収穫したばかりのジャガイモを蒸かして、届けてくれたおやつを麦の茎で突き刺し食べたことも思い出した。まもなく入梅だ。多くの方の支援をいただいて始めた補食給食のデザートとして、この日届けられた枇杷の実を食べながら、夜間中学生と語り合った。
 天体の動きは、そんな感傷にひったっているのをひっぱたくかのように、金星の太陽面通過があると伝えてきた。夜間中学の授業では追いつけなくなってきた。とりあえず、金環日食で使った眼鏡を再び配って、観測を依頼した。教室からは、当選者を決めるため、派手なじゃんけんが始まった。
 「先生、見えました。小さな、小さな黒い点でした。首が痛くなるまで、じっと見ていました」学校に来るなり、このように感動を話した。次は108年後、「とても生きていませんわ」「そのときはもう一度、出てきます」とにかく夜間中学生は元気だ。

[ 2012/06/24 20:19 ] 寄稿 | TB(-) | CM(-)


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