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映写室「珈琲とエンピツ」今村彩子監督インタビュー(後編):犬塚芳美

 ―ろう者の世界を飛び出した軽やかなコミュニケーション―

<昨日の続き>
―そういう意味でも、この作品は監督の大きなステップになるのでは?
今村:そうですね。今までと違って長い作品ですし、1年半かけて追っかけ取材をしました。名古屋から静岡まで電車で通って、夜遅い時は太田さんのショップに泊めてもらって、家族のように付き合って、作った作品です。この1年半はかけがえの無い時間でした。


―最初から、そういう長い密着を計画されていたのですか?
今村:始めは「珈琲トエンピツ」の前に、太田さんの25分の短い映画を作りました。でも太田さんを見ていると、大切な魅力がまだまだ伝わっていないと思ったんです。自分が見たのはもっともっと太田さんとお客さんが繋がるところとか、生き方とか、家族のつながりとかで、深い。だから、更に取材をしようと思いました。そうしてこの作品が出来たわけです。
―監督から見た太田さんはどんな存在ですか?
今村:何かにぶつかって困った時は、太田さんのところに行って意見を聞きたいなあと言うような存在です。諦めないで夢を持ち続けて生きている人だから、壁にぶつかって挫けそうな時は相談して元気を貰いたいと思います。

―そういう、こちらを元気にして下さるパワーをお持ちなのですね。
今村:そうですね。頑張って夢を実現した人のパワーと言うか、皆もそれを感じていると思います。特に励ましてくれるわけではないのですが、話していると冗談も一杯で、それで元気になっていくと言う感じです。落込んでいる時だと、元気になって帰ってくると思います。
―そういう太田さんには悩みは無いのでしょうか?ろう者だからと言うのではなく、今の厳しい世の中を生きるのですから、誰だって悩みを抱えていると思いますが。
今村:家族には解かりませんが、私に対しては悩んでいる姿を見せたことがありません。職人としてのプライドもあるし、店長としてお客様には笑顔で接していて、凄いなあと思いました。私も悩んでいるところを撮りたかったのですが、感じないと言うか。見せないようにされているのではないでしょうか。自分より若い人に対しては特に見せないかも。

―何度断られても、ボード職人になるのを諦めなかった人ですものね。冒頭のボードを削る音が印象的です。ボードがこんな風に、例えばその人の足に合わせた靴のように、個人仕様だとは知らなくて驚きました。
今村:私もそうです。その人の身長とか色々な要素で決まると言うのは取材で解かったことです。長さや厚さ、ペインティングの模様や色と、色々お客様の注文で決まることも多い。細かい寸法とか、太田さんは筆談で聞いていますが、お客様とのコミュニケーションが大事で、ろう者のボード職人は世界で4人だけだと聞いています。

―確か、この作品の編集中に東北大震災が起こったんでしたね?
今村:3月22日に、太田さんの映画の編集を中断して、震災後初めて東北に行きました。被災地でろう者の方がどうなっているのか気になったのです。その後も合計6回行き、4人のろう者に会って話を聞きました。その時の取材で、津波の警報が聞こえなかったが隣の人に教えてもらって助かったとか聞き、ろう者が情報を得られなかったことに気付きました。映画の中で海で楽しそうにサーフィンをしています。その同じ海で東北の人々は命を奪われました。海の映像を見るのは辛いのではないか、公開を伸ばしたほうがいいのかもと思いましたが、被災地で、「これからの日本に大事なのは地域の絆だよ」と聞いた時に、(あ、太田さんはお客さんと絆で繋がっている。この映画を多くの人に見て欲しいな)と思って、編集を始め、去年の10月に完成しました。

―太田さんはごらんになって何と?
今村:自分の人生を映画として見て、人生を見つめなおすことが出来た。有難うと言われました。それを聞いて嬉しかったです。
―この作品は太田さんにとっても人生が凝縮されたものだったのですね。ところで、さっきから拝見していますと、気持ちに近い動作が手話には多いような気がします。気持ちをジェスチャーで表しているというか、私もやってみたくなりました。
今村:ええ、ぜひやってみて下さい。

―監督は劇場公開を見ていかがでしたか?
今村:初めての上映は豊橋であったのですが、ここは私の第2の故郷でもあって、感動しました。映っている自分を見るのはちょっと照れくさいですが。
―そういうことがあると、ますます映画の魅力に嵌り、次の構想も浮かぶのではないでしょうか?
今村:構想は2つあります。私のプロフィールを見ていただくと書いていますが、ダスキンがやっている事業に、障害者を世界に留学させる制度があります。私はこの制度でアメリカに留学しましたが、それとは逆に、アジアの障害を持っている人を毎年7,8人日本に呼んで、研修をする仕組みもあるんです。彼らが成長していく姿を撮りたいと思っています。日本で学んだ経験を、自分の国でどう生かしていくか、其処まで取材したいと思っています。もう一つはろう者のお母さんがいるある家族の物語で、其処のお子さんが保育園かに入って自分の家庭とまるで違う環境を知り、どう育っていくか、成長の記録をとりたいと思っています。

―長くなりそうですね。
今村:ええ、10年間位追いかけてみたいと思っています。
―旺盛な創作意欲です。
今村:そんな風にして、ろう者だけではなく、世の中には色々な人がいて、色々な形の情報を求めていることを広く解かって頂ければ、皆が生きやすい世の中になるのではないかと思います。(聞き手:犬塚芳美)

<作品の感想とインタビュー後記:犬塚>
 水平線のかなたに浮かぶ白い雲。アロハシャツの似合う日焼けした恰幅のいい太田さん。ハワイアン小物と色とりどりのサーフボード。珈琲を片手に、身振り手振り、時にはエンピツをさらさらと走らせて、会話を続ける太田さんとお客様。まるで妹のように太田さんに迫る今村監督。からっとした明るく爽やかな空気が流れています。太田さんはたまたまろう者だけれど、ろう者の世界を生きてはいません。誰とも心を開いて、自分らしくコミュニケーションを取ります。サーフィンは出来ないけれど、こんなお店に行ってみたい!
 今村監督の可愛さも抜群!可愛いお顔に秘めた闘志も抜群です。二人に感動したら、次回作も乞うご期待!

この作品は、5月5日(土)~6月1日(金)の間、大阪シアターセブンで上映
時間等は直接劇場(06-4862-7733)まで。
順次京都シネマでも上映予定


画像付きの記事はhttp://eiganotubo.blog31.fc2.com/blog-entry-339.html
[ 2012/05/03 06:38 ] 犬塚芳美 | TB(-) | CM(-)


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