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日曜新聞書評欄簡単レビュー:三室 勇

朝刊各紙の一面大見出しがすべて違う。朝日:新生児の体重 減る一方、毎日:老朽化進む命綱(原発周辺の避難路の話)、読売:海外卵子提供で出生130人、日経:GM、いすずに出資交渉、産経:南沙の海保力支援、京都:府内事業者計画不十分(温室効果ガス削減)
今週も日曜日恒例の新聞書評欄から。


京都――
ローレンス・C・スミス『2050年後の世界地図』(NHK出版、2940円)、評者・鷲谷いづみ。著者は地理学者、温暖化、地球生態系の変化、世界の人口構造、経済活動の変化などをシュミレーションして描き出したもので、サブタイトルにあるように「迫りくるニューノース時代」、つまりあと40年もしたら北緯45度以北、北極圏、アラスカ、カナダ、アイスランド、北欧、ロシアなどで人間活動が活発化し、経済活動でも重要性が増すという話だ。最近の報道で太陽の磁場に四重極構造が表れつつあり、300年前にもあったが、そのときは寒冷化したことから、温暖化は一時的に抑制されるのではといった観測がでている。

自立生活サポートセンターもやい編『貧困待ったなし!』(岩波書店、1995円)、評者・大橋由香子。自立生活サポートセンターもやいは、年末の越冬炊き出しや湯浅誠(事務局次長)の活動で知られているが、そこで働く支援スタッフ十数人が「もやい」との関わりを語ったものを集めたのが本書のようだ。ホームレス状態になって「もやい」を訪ね、生活が落ち着いたところで、支援スタッフに加わったもの、仕事に疲れ、居場所探しで「もやい」に出会った者、それぞれの「当事者性」が語られている。網野善彦の「無縁」に通じるものを感じる。支援を受ける者、支援する者、いずれも男が多いようだが、社会の中で当たり前のように行われている性差別や性による役割分担についても、ここでは議論するという。

ロナルド・ドーア『金融が乗っ取る世界経済』(中公新書、840円)、評者・中村達也。
世界経済が金融化・投機化にむかった結果どうなったか。、格差拡大を生み、一部経営者は莫大な富を築いた。労働者は低賃金闘争に追いやられ、不確実、不安が増大し、優秀な人材が金融界に流れ、信用と人間関係にゆがみが生じてしまった。そしてリーマン・ショックだ。しかし、日本がショック直前に出した『経済財政白書』では、日本企業はリスク・テークに意欲が弱いことが低成長の一因であり、国民が証券文化に馴染んでないこと、金融リテラシーが足りないと指摘していたという。もろにリーマン・ショックを受けなかったのは、そのおかげのはずなのだが。

読売――
マイケル・イグナティエフ『許される悪はあるのか?』(風行社、3000円)、評者・細谷雄一。著者は世界で大きな影響力を持つ知識人の一人と評者は紹介している。ハーバード大学教授を経て、カナダの自由党党首へ、選挙で大敗し、トロント大学教授へ、という経歴だ。著者には『軽い帝国──ボスニア・コソボ・アフガニスタンにおける国家建設』というルポルタージュがある。これらの地域の紛争解決にはどうしても覇権国アメリカの力が必要だ。しかし、その際は人道目的の一過性の覇権として「軽い帝国」であって欲しい。そんな内容の本だ。本書もその延長にある。9.11後、テロリズムに対して、デモクラシー国家として安全と自由をどうバランスするのがよいのか。かれは中間の立場を主張する。道徳上の絶対主義にも冷徹な現実主義にも加担せず、「より小さな悪のモラリティ」という考えを出している。それは先の一過性の覇権としての「軽い帝国」に通じるものだろう。
[ 2012/04/29 09:20 ] 三室勇 | TB(-) | CM(-)


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