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コラム「風」 韓流に負けない文化力を:嶋村初吉

 世界の中で、日本は製造力に優れた国である。ものづくりの技は、各分野に及ぶ。食文化では、海外で日本の料理が人気を集める。寿司、麺類とか鍋物とか、人気のある食べ物はたくさんある。最近では、「麺の国」韓国で長崎チャンポンがもてはやされているという。感動するのは、日本の職人が本場を超える新商品を作り出している、その技と情熱である。


▼ヨン様ブームを巻き起こしたドラマ「冬のソナタ」の舞台となった韓国・江原道の春川市と、姉妹都市提携を結ぶ岐阜県各務原(かかみがはら)市を紹介するテレビを見て唖然とした。なぜか。本場に似せた光景が随所に出てきたことと、韓国のキムチ顔負けの和製キムチの多彩さに驚いてしまった。地元でとれた野菜を生かして、独自の和製キムチを次々と生み出していた。寿司屋には、ネタにキムチを使った握りもあった。日本人の「ものづくり」の技は、すごい。

▼なのに、ドラマ制作では、近年、見劣りがする。とりわけ歴史ドラマは低調である。本来、歴史ドラマの役割は大きいのではないか。日本を知る、歴史的教訓に学ぶという意味からである。しかし、放送局は積極的に制作に踏み込まない。歴史物は制作費が高くつくだろうし、シナリオ作家の力量が問われるからだろう。かつて、朝鮮通信使縁地連絡協議会(会長=財部能成・対馬市長)は、朝鮮通信使を題材にしたドラマを制作してもらえないかとNHKに要請に行ったが、断られた。適当なシナリオがないことが大きな要因だったと聞いた。

▼毎年、歴史小説は数多く発表されている。一昨年から昨年にかけて日本経済新聞で長期連載された辻原登氏の『韃靼の馬』は、江戸時代、日朝の懸け橋となった対馬藩の藩士に光をあて、朝鮮通信使を軸に、時代を動かした新井白石、雨森芳洲(あめのもり・ほうしゅう)も登場した大作であった。評判を呼んだ作品だけあって、『韃靼の馬』は司馬遼太郎賞を受賞している。

▼韓国は1年間に100本近いドラマを制作する、世界でも有数のドラマ多産国である。そのため、人気作家の新作が発売されると、監督はそれをいち早く入手して、版権を抑えることを競うことさえある。「これはうける」という、その世界独特の嗅覚が働くのであろう。日本では、どうか。最近、話題になった歴史ドラマ『仁』は、原作はマンガだった。現代の医師が江戸末期の世にタイムスリップ、未来からの使者として画期的な医療を施すという設定で、面白いストーリーといい、大沢たかお、綾瀬はるかといった俳優陣も評判を呼び、視聴率は高かった。人気マンガを題材にするケースが、過去になく多くなった。

▼昨年、大学で100人ほどの学生にアンケートした。歴史上の人物で、好きな人物は誰か、という質問をぶつけると、最も多かったのは坂本龍馬だった。その前年に、福山雅治主演の「龍馬伝」がNHK大河ドラマで放映された影響もあったかも知れない。維新政府の方針を書いた「船中八策」も知っていた。

▼それにしても、日本で歴史ドラマの制作は少ない。教養主義路線を強調するわけではないが、若者が海外の人たちと話すとき、自国の歴史を語れなくては、情けない。テレビの影響は大きいのである。現在、放映中の番組で、思い浮かぶのはNHK大河ドラマ「平清盛」ぐらい。歴史を学ぶにも、ドラマの本数が少ない。その上、主人公はマンネリ化しており、新鮮味に乏しいという悪評を聞く。

▼新年度の4月に入り、民放各局の新番組が次々と登場しているが、そのなかで、目立つのがBSの韓国歴史ドラマである。百済の将軍「階伯(ケベク)」の放映が始まり、その前から始まっている「善徳女王」「太祖王建」「イ・サン」「トンイ」などを見れば、三国時代、新羅、後三国、高麗、朝鮮王朝を通観できる。これに現代ドラマを加えると、一日、韓国ワールドにはまってしまった錯覚を覚えるのではないだろうか。

▼日本で放映される韓国歴史ドラマの話題作は、イ・ビョンフン監督の手になる作品が多い。歴史ドラマの醍醐味を伝えた巨匠が、刺激を受けたのがなんと、1996年、NHKで放映された豊臣秀吉のドラマだった。当時、大旋風を巻き起こしたのはともかく、若者たち、とくに中高生が見ていたことに監督は驚いたという。そこから監督は「歴史ドラマは面白くなければいけない」「若者たちに受け入れられる新鮮な時代劇づくり」を、自らのモットーにしたそうである。

▼イ・ビョンフン監督の『韓流時代劇の魅力』(集英社新書)の中に、こうある。「韓国で作ったドラマが、文化も歴史も違う日本で受け入れられたのは、面白さと有益さという私の二つの創作哲学が、世界のどこでも共通だからかもしれない」。ドラマ制作40年の人生で、彼は歴史物を多く手掛けた。朝鮮王朝シリーズは450話もつくっている。視聴者からの反響で彼を喜ばすのは、次のような歴史教諭の言葉。「監督のドラマが子供たちの歴史理解に大きく役立っている」

▼ドラマは、見る人を励まし、生きる力を与えるという効能がある。だから、面白いドラマだと、やみつきになってしまう。韓流歴史ドラマには、サクセスストーリーが多い。対抗勢力の陰謀、策略を撥ね退け、困難な道を乗り越えて、自分の夢を獲得する。賤民階級から上流階級へと駆け上っていくストーリー展開である。高視聴率を集めたイ・ビョンフン監督の「宮廷女官 チャングムの誓い」「ホジュン(許浚)」「商道(サンド)」など、その代表的な作品である。

▼東京・新大久保のコリアタウンを、昨年12月、友人と歩いたが、人通りは想像以上だった。韓国の芸能人関連グッズ、化粧品、食料品の店などが乱立した一帯は、熱気でムンムン。「イケメン通り」と呼ばれる路地には、60店以上の飲食店が集まると聞き、驚いた。韓流ブームを当て込んで、この一年間に出店した店がほとんどだ。この人気で、地価も高騰しているなか、韓国ビル3棟が最近、完成していた。

▼「K-POP」に端を発した第2次韓流ブームは、依然衰えることを知らない。「東京の中のリトルソウル」に全国からファンが訪れている。通りには、中高年の姿も数多く見かける。中高年は、韓流歴史ドラマにはまって、韓国好きとなり、韓国語を学び、韓国旅行に出掛ける。女性はイケメンスターの追っ掛けやファンミーティングにまで顔を出している。何とも、エネルギッシュである。

▼ドラマの凄さは、観光振興にまで弾みがつく経済効果があることである。日本では、大河ドラマ効果で、それが放映される間は、舞台となった自治体は観光PRに精を出す。現在、放映中の「平清盛」では下関(山口県)ロケはないと関係者に聞いた。源平壇ノ浦決戦がないということは、地元の観光業に携わる人たちには残念ではあろうが、それにもめげず「平清盛」PRは、パンフレットを製作するなどヒートアップしていた。

▼大河ドラマを観光振興に繋げようと努力する関係自治体の努力には頭が下がるが、翻って国は何をしているか。これがお粗末なのである。道上尚史・在韓国日本公報文化院長の話では、「中韓が文化の海外発信を強化するグローバル競争の中で、日本の広報文化の予算は逆に減ったと聞くが」(3月29日付、朝日新聞・朝刊)とあった。

▼日本は、民主党政権になって政治的混乱が続く。日本文化を世界に発信する戦略も弱体化しているのであろう。それに比べ、韓国は、国を挙げて文化輸出に力を入れ、音楽やドラマ制作に力を入れている。それが韓国のイメージ訴求に効果があり、実際、韓国製品の販売を後押しする相乗効果をも生み出している。K―POP旋風は凄まじく、アジアはもとより、中近東、欧米をも席巻している。

▼韓国、中国に押されがちな趨勢の中、日本の存在感を回復できるか。日本のソフトパワーを、再び盛り上げることができるか。その反転攻勢は日本人の誇りを取り戻すためにも必要であるに違いない。
[ 2012/04/07 00:16 ] Web管理室 | TB(-) | CM(-)


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