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映写室 「KOTOKO」塚本晋也監督インタビュー:犬塚芳美(前編)

―Coccoの魂とのコラボレート―

 「鉄男」、「六月の蛇」と鬼才ぶりを発揮する塚本晋也監督が、長年切望してきたシンガーソングライターのCoccoとコラボレートして、愛する息子をひとりで育てて守り、この生きにくい今を生き抜こうとあがく女性の精神世界を映像化しました。主人公のすさまじい生き様は、どこまでが現実で、どこからが幻想なのか解からない。でも一皮向くと、それは誰もの精神世界でもあると思わせる、不思議なリアリティに溢れてもいる。戦争、震災、閉鎖的な社会と、いたるところにある、今の世の危険と冷酷さ。一人でも大変なのに、誰かを守って生きるのは、なんと過酷なことだろう。塚本晋也監督に、ここに行き着くまでの、二人の創作過程を伺います。

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<その前に「KOTOKO」とはこんなお話>
 幼い息子をひとりで育てている琴子(Cocco)は、世界が二つに見える。どちらを信じればいいのか、この世は危険だらけだ。息子を守ろうと強迫観念に縛られ、妄想とも現実とも区別の付かない世界に紛れ込む。挙句に幼児虐待を疑われて、息子は遠く離れた地に。ある日、彼女の歌に惹かれたという男(塚本晋也)が近づいてくる。

<塚本晋也監督インタビュー>
―衝撃的な作品ですね。痛々しくて何度も目を塞いでしまいました。突き抜けた架空のお話なのに、必死で平穏を保っている今の私の内面世界にも近く、身に詰まされます。さすがに塚本監督とCoccoさん、容赦なく、とことん心を掘り下げていきますね。この作品が誕生するまでを教えてください。
塚本晋也監督(以下敬称略):Coccoさんとは「ヴィタール」の時に歌をいただいたのが直接的な関わりの始まりです。尊敬し、惹かれるアーティストなので、いつか映画を撮らせてと、言い続けていました。昨年、7年間介護をした母が亡くなったんですが、そんな時にCoccoさんが現れて、短編集「Inspired movies」に誘われ参加したんです。Coccoさんの映画を撮るのは長年の夢だったので、頑張って作りました。それが気に入っていただけたようで、「ライブツアーまでのある期間なら時間があるよ。映画を作れる」と言ってもらえたんです。この段階では企画等何も決まってなかったけれど、このチャンスは逃せない。とにかくやろうと、そこから二人でじっくり話して、テーマ等を探っていきました。

―この作品は、最初にCoccoさんありきだったわけですね。どうしてそこまでCoccoさんに惹かれるんですか?
塚本:(そんなの当然でしょう)と言おうとして、どう当然なのか言葉に詰まりました。解っているようで、言葉に表しにくい。この作品はそれを探る旅だったかも知れません。
―質問した私にしても、監督がCoccoさんに惹かれる当然さは、感覚として解かるし、作品を拝見してもそれは感じるのですが、監督がそれをどう言葉で表現されるのか、興味を持って質問したようなものです。
塚本:Coccoさんの歌は魂に響いてきます。上手い言葉が見つからないけれど。

―ええ。このテーマに行き着いたのは?
塚本:最初は、何も決まってなくて、とにかくCoccoさんの心の中を探ろうとしたんです。Coccoさんの言葉を浴びるように聞いたし、言葉だけでなく文章もたくさんもらいました。その中から、僕が映画にできそうなものをすくい取り、物語にまとめていきました。その時々にCoccoさんにチェックしてもらって、違和感のあるところを指摘してもらって直しを繰り返したので、完成した時には、Coccoさんと琴子の間にブレが無く、一本筋が通っていたと思います。

―そして、子供をひとりで守る女性の話になっていったと。
塚本:ええ。僕も子供がいますが、将来を考えると不安になる。何時戦争に巻き込まれるかも解からない、今の不安定な世の中で、子供を守ることの困難さを感じていたんです。それに、7年間介護した母を亡くしたところでもありました。その経験がなければこの作品は出来てなかったと思います。又、僕の場合は、母が悪くなっていく隣で、子供はぐんぐん育っていく。その対比を目の当たりにしていました。子供を守って育てていくのは大変だけれど、一方で子供は子供で、逞しく一人でも育っていき、親を助けてくれるところもある。そんなことが基本にありました。

―琴子の強迫観念の元凶は、物事が二つ見えるということですよね。極端に悪い状態が見え、その恐怖感から、子供を守ろうと必死になり、だんだん追い詰められていくわけですが。この物が二つ見えるというのは、Coccoさんの経験ですか?
塚本:はい。Coccoさんから最初に聞いたのは、「私は物が二つ見える」と言う話でした。二重という意味ではなく、物事が違って二つ見えると言っていました。どちらを追えば良いのか解からなくて、追っていった結果、悪いことが起こり、それが嘘だとわかるとほっとするし、本当だと大変なことになると言っていました。Coccoさんは最初から2つ見えたみたいだけれど、この映画では、その理由を作っています。よく見ていただくと解かるんですが、この物語は、琴子が過去に受けた暴力が原因でそうなったという風になっています。例えば戦争とか、そういう暴力を受けると、人は簡単にはそこから脱出できない。その後の人生に尾を引きます。そういう設定にしています。戦争の経験のある人に聞くと「戦争は絶対にやってはいけない」と言うけれど、経験がないと、時代の閉塞感を「戦争でもしないと変わらない」とか簡単に口に出す人が出てくる。そういうことにも危機感を持っていました。

―テーマも、一言では言えないというか。余裕の無い今の時代の生きにくさが根底にあるのでしょうか。一人でも大変なのに、息子を抱え、守ろうと必死になって、追い詰められていく様が、現実離れしているようで私にはとてもリアリティがありました。今の世の中、誰かを守って生きるのは過酷ですよね。出来るだろうかと重圧に押しつぶされそうにもなる。守る者と守られる者、母親と子供との距離感、琴子は特別な存在のようで、誰もの中のもう一人の存在でもある気がします。若い子育て世代の親子連れとか、公園で楽しそうにしているけれど、父親の方は、自分の奥さんがこんな追い詰められたところで、子育てをしているのを感じているのでしょうか?
塚本:仕事が忙しくて、表面的なところしか見ない人以外は、解かっていると思います。そういう平和な情景はテレビドラマの世界ですよね。優しいお母さんというのはお母さんの中に確かにあるし、お母さんもそれを理想にしています。でも反対に琴子が持っているような焦りや恐怖感がたくさんあるんじゃあないでしょうか。明るいだけではないもう一つの面が、子育てにはあるんです。震災後にしても、あっけらかんとしている人と、琴子のようにとても過敏になる人がいて、両極端なんだけれど、琴子はそんなに特殊な存在ではないと思います。<明日に続く>

この作品は、4月7日からシネ・リーブル梅田、
      4月14日からシネ・リーブル神戸、
      4月21日から京都シネマ にて公開


画像付きの記事はhttp://eiganotubo.blog31.fc2.com/blog-entry-333.html
[ 2012/04/04 07:26 ] 犬塚芳美 | TB(-) | CM(-)


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