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日曜新聞書評欄簡単レビュー:三室 勇

日曜各紙一面は、「南海トラフ地震予測」が出ている。朝日―津波20メートル以上6都県、毎日―高知で34メートル津波想定、読売―津波 高知で最大34メートル、産経―浜岡 予測超す津波、日経―津波20メートル超 6都県、京都―津波20メートル超 6都県に、となっている。
今週も日曜日恒例の新聞書評欄から。


毎日――
一ノ瀬正樹、伊東乾ほか著『低線量被曝のモラル』(河出書房新社、3360円)、評者・松原隆一郎。本書は昨年夏、東大文学部哲学科で行われた討論会の記録である。出席者は6名、哲学者、宗教学者、物理学者兼音楽家、放射線医学者、先端医科学研究者などである。年間1ミリシーベルトが通常の人の許容できる放射線量だが、20ミリシーベルト以下の場合、その影響に関するデータがないため、影響評価にさまざまな意見あり、定まらない。ここに医科学者ではない領域の人たちの議論介入の余地があるわけだ。もともと放射線影響は専門領域の話として行われていたものが、原発事故により広く住民に直接的に影響することになったとき、科学技術者は一般市民に説明義務と最小限被害に抑える義務を負うはずで、ここに科学技術者のモラルが発生する。評者は「学者は大量データから確実な主張を行おうとするが、現実生活の多くはそれに該当しない領域で営まれている。そうした前提を踏み外した議論が学者への信頼を失墜させ、混乱を招いた」と書いている。

京都――
「出版あれこれ」欄にハンギョレ新聞『不屈のハンギョレ新聞』(現代人文社、3150円)が紹介されていた。川俊治、森類臣共訳によって刊行された本書は、韓国の独立系新聞であり、民衆の立場から権力・大資本批判記事を送りつづけたハンギョレ新聞の20年のをまとめたものだ。ハンギョレ新聞は軍事政権と癒着した既存紙に批判的な市民約2万七千人が、50億ウォンを出資しつくられた世界に類例のない新聞として1988年に創刊された。民主化後の政権不正にも目をひからせ、そのあおりをくって倒産寸前まで追い込まれても、リストラに社員みずからが協力し、「創刊時の志」を通したという。しかし、そのハンギョレ新聞もネット時代になって変化がみられると、共訳者の森立命館大コリア研究センター専任研究員は述べている。紙媒体では利益が出ないため、各種市民向けセミナー、企業コンサルタントなど経営を多角化してきており、一時期の批判力の切れ味にかげりがでてきているという。その1つが李明博大統領の新自由主義的政策による格差問題に切り込めていないといったもどかしさがあるらしい。日本ではこうした市民資本による新聞創刊の歴史がなく、市民メディアのあり方を考える1つのモデルになるのではないか。

ウィルアム・H・コルビー『死ぬ権利はだれのものか』(西村書店、1680円)、評者・まつばら けい。進んだ終末期の医療技術により遅延される死の問題が身近なものになりつつある。植物状態で生きる人間を家族はどう対処するか、これも大きな問題だ。本書ではアメリカの例が紹介されている。1990年に心臓発作で意識の回復が見込めない状態になった妻の延命装置を外すための訴訟を行った夫に対して、妻の両親が反対し、訴訟合戦になった。それぞれに支援者がつき、大きな社会問題になったという。2005年に裁判所は装置を外す命令を下したが、それに反対する側は「ナチス」「殺人鬼」といったプラカードを掲げて抗議した。こうした本人の意思が問えない状態で死をどう扱うか。高齢者の死の問題も同様なケースがでてくる。自分の場合を含めて、考えておかなくてはいけない時代になったということらしい。

読売――
ポール・ロバーツ『食の終焉』(ダイヤモンド社、2800円)、評者・中島義信。本書は2008年に出版され、話題になった本である。20世紀の後半まで食システムは問題ないと考えられてきた。ところが食システムの構造――巨大生産・流通・小売り網の実態が明らかになってきたことで、じつはこのシステムが破綻しつつあることが明らかになってきたと本書冒頭で書いている。この危機感から世界各地を取材し、その様相に迫ろうとした力作である。本書は、第1部 食システムの起源と発達、第2部 食システムの抱える問題、第3部 食システムの未来からなっている。ここで「食システム」とはなにか、本書の解説を紹介しておこう。食料の生産・流通・消費をひとまとめとして捉え、その相互に影響し合うシステムが構築されているといった考え方である。食料は、農水産業をはじめ、食品加工産業、食品卸業、小売業、外食産業などを経て消費者に届けられる。こうしたネットワークはグローバルに張り巡らされており、食の問題を考えるとき、食システム全体に目を向ける必要がある。都市生活者にとって食の安全性、食料の確保の問題は、直接食料生産に携われないため、漠とした不安となっている。私たちの食がどんなシステムで賄われているか知ることにも大いに役立つ本である。



[ 2012/04/01 09:07 ] 三室勇 | TB(-) | CM(-)


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