恒例の日曜日新聞紙読書欄簡単レビューだ。読売新聞の1面には驚いた。最初、別刷り新聞かと思った。そうではない。横見出しはこうだ。
時は流れない。雪のように降り積もる。
人は優しくなったか。賢くなったか。
編集手帳が1面頭にある。内容は秀逸だ。いままで読んだ編集手帳の中では一番と思わせる。普段の3倍から4倍はある。
「ほかのすべてが消えた1年前のあの夜に、1人ひとりが立ち返る以外、時計の針を前に進めるにすべはある。この1年に流した一生分の涙をぬぐうのに疲れて、スコップを握る手は重くとも。」
悲しみがわかるジャーナリストが読売にいる。
岡本公樹『東北 不屈の歴史をひもとく』(講談社、1400円)―読売―は読売記者の書だ。長く東北で記者活動をしてきた今年40歳の若きジャーナリスト。おそらく「周縁としての東北の側に立って考えるべきだという熱い想いが溢れている」(評者三浦祐樹之)の書評の言葉が著者のモチーフ射抜いている。「不屈の歴史」をひもとく視点は瑞々しい。3・11の東北の姿が歴史をひも解かせたのだろう。
石井正『石巻災害医療の全記録』(講談社ブルーバックス、940円)ー読売―は石巻地区で災害医療救護を統括した医師の記録だ。宮城県知事から「県災害医療コーディネター」の委嘱を受けたばかりの著者が書いた。そこには将来の災害時の医療について多くの示唆を与える。著者の4つのことばが引用されている。「すべての人に敬意を払うべし」「ベストを尽くせ」「迷ったら、やれ」「行動した後悔より、行動しなかった後悔の方がより深い」。評者畠山重篤。
吉本隆明『吉本隆明が語る親鸞』(東京糸井重里事務所、2700円)-読売―はCDがついた書だ。親鸞の正定聚(しょうじょじゅ)の考え方に注目する。念仏を唱えることの解釈だ。阿弥陀の第18願は一切衆生を往生させる。これは次世で成仏が保証されることは、念仏者は仏であるかのように行動しなければならないーと吉本は説く。共和社会を説くことでもある。正定聚の思想を考えるうえでヒントになるだろう。評者橋爪大三郎。
[ 2012/03/11 11:01 ]
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