ジャーナリスト・ネット公式ウエブサイト

ジャーナリストの取材記事、論考などそ掲載するブログ
ジャーナリスト・ネット公式ウエブサイト TOP  >  スポンサー広告 >  犬塚芳美 >  映写室「不惑のアダージョ」井上都紀監督インタビュー(後編):犬塚芳美

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[ --/--/-- --:-- ] スポンサー広告 | TB(-) | CM(-)

映写室「不惑のアダージョ」井上都紀監督インタビュー(後編):犬塚芳美

―パンドラの箱を開けて―

<昨日の続き>
―シスターにしても、ダンサー等男性との出会いで色々変わっていきますね。メイクもチークが入りだしたり、髪の毛の出具合も多くなっていく。

adagio_main.jpg
潤・2009 Autumn Adagio Film Committee

井上:メイクは綿密に変化をつけています。メイクさんに色々細かく注文を出しました。髪の出具合も徐々に多くしたりと。そういう意味ではとても繊細な作品です。私は余計な描写が嫌いなので、些細なことに意味を持たせる。描き方や説明加減は、観客の方をどこまで信じられるかです。私的にはこれでも充分説明的で、本当はもっとそぎ落としたいんですが。この作品だと、彼女が台所で一人で受け入れるというのを大事にしたい。最初と最後はオルガンを弾くんですが、最初のシーンは単なる伴奏だったのが、外の世界に触れて、淡い感情も持ち、音楽が変化する。音楽を楽しみだして、演奏が音楽になっていくんです。その大きな変化を描きたかった。

―そんな複雑な主人公を演じる柴草さんが素敵です。物静かなのに存在感がある。こんなシスターがいそうに思えました。
井上:彼女はシンガー・ソングライターなんですが、「大地を叩く女」の時に、主演の方に紹介され、音楽と共に制作として関わってもらいました。その時に独特の佇まいが気になって、今回は彼女への当て書きです。ストーリーを思い付いた時、柴草さんしかいないと思って、お願いしていいお返事を貰っていたんです。名前の知られた方だと、どうしても役以上にその人を思い描いて色が付いてしまう。コスプレになりますからね。それは避けたかった。でも存在感も必要です。このシスターのような、秘めた思いを持ちながら、自分でもそれに気付かずたんたんと生きてきた人の静謐さ、そういうものが欲しい。最初に出てきた瞬間に嘘だと、映画自体が成り立たないので、そこのあたりには神経を使いました。柴草さんは大変だったと思います。演技経験も無いのに、凄く細かいことを要求され、よく頑張って下さいました。

―眉間や口元に、一人で生きてきた人の潔さがあるますよね。すっかり魅せられました。ところで、この作品もオリジナルですね? 今後もオリジナルを?
井上:そう出来れば良いなあと思います。なかなか難しいけれど、誰も作っていないものに挑戦したいので。監督をする上で、脚本を書いていると言うのは強みです。スタッフにここはこうだとはっきり言えますから。好きな作品とか、好きな監督とかも、よく聞かれるんですが、作品の中の好きなところとそうでないところがあるし、監督にしても油の乗っているときとそうでない時とか色々ですから、どれが好きとか決めたくないんです。

―作品を撮って、監督自身は変わりましたか?
井上:何も変わっていません。映画を撮ると宣伝もあって本当に忙しい。相変わらず、自分の事は後回しで、なかなか生活を変えれなくて。焦りから作ったというのに問題ですね。微妙な問題なので、見ると誰かに話したいらしく、女性の取材だと、まず自分の事を喋り始める。それが顕著です。又、先行した東京では、女性向けの宣伝をしたのですが、蓋を開けてみると、女性と男性が半々でした。女性も男性も相手の体のことが解からない。ある種ファンタジーの領域じゃあないですか。そこへの興味もあるようです。それと男性の中にはエロスを求めてくる方もいるようで、エロかったねと言われたりしました。これはほとんど小父さんですが。

潤・2009 Autumn Adagio Film Committee

―意外です。修道女と更年期と言う二つのタブーから、そういう風に連想する方もいるんですね。
井上:シスターに設定したのは、街の中でお見掛けしたりすると、禁欲的な生活の中で、心が揺れることは無いだろうか、世間と一線を引いた人だからこそ、心のふり幅が大きいのではないだろうかと考えました。主人公は神に仕える特殊な職業ですが、自由に生きている人でも、色々な意味で枠を作り、ある種禁欲的に生きていると思う。心を揺らした後に訪れるものを見て欲しいと思います。


<作品の感想とインタビュー後記:犬塚>
 チラシは、まるでヨーロッパ映画のようなテイスト。まるでもう一つの見所のように、憧れを込めたシスター目線で映る、西島千博さんの華麗なダンスシーンがあります。これも必見。監督の年齢だからこそ描ける、ネガティブな更年期の捉え方には異議もありますが、これもまた一つの真実。誰も時間は止めれない。神様から渡された時間の長さも同じ。それをどう使うかは千差万別。何をしても後悔が残るだろうし、自分の好きなように生きれば、後悔したとしても納得できるのではないでしょうか。
 ところで、監督の繊細さには驚嘆です。心の変化を描くだけに、説明を避け、日常の中の細かい変化描写を積み上げ、納得させる手法は、圧巻。そぎ落とす過程の過酷さを思わせました。この若さでこの緻密さ、次はどんな作品を作られるのでしょう。そんな将来も楽しみな、京都出身の女流監督最新作、ぜひ御覧下さい。

この作品は2月4日より、テアトル梅田で上映
順次京都シネマ、神戸アートビレッジセンター にて公開


画像付きの記事はhttp://eiganotubo.blog31.fc2.com/blog-entry-326.html
[ 2012/02/04 07:10 ] 犬塚芳美 | TB(-) | CM(-)


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。