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日曜新聞書評欄簡単レビュー:三室 勇

本日の各紙一面見出しはつぎの通り。
京都:原発事故 最悪想定を封印、産経:任官辞退で250万円徴収へ(防衛大)、毎日:原発推進研究に104億円(国と関連企業)、日経:東電、1700万世帯に導入(スマートメーター)、読売:白血病ワクチン治療(成人T細胞)、朝日:原発教育 事故後も交付金。


今週も日曜日恒例の新聞書評欄紹介――朝、毎、日経、産経、地方紙の5紙の中から拾った。

京都――
鈴木荘一『ひとはなぜ、人の死を看とるのか』(人間と歴史社、2835円)、評者・まつばら けい。著者は東京の開業医で、30年ほど前に英国のホスピスを訪ね、その後、日本へホスピス(緩和医療)導入に貢献したで人あり、1978年に創設された日本プライマリ・ケア学会にかかわった医師である。
日本では年間30万人以上が癌でなくなる。癌末期には癌性疼痛に患者は苦しむ。緩和医療とは、モルヒネなどを上手に使うことで疼痛を和らげ、終末期を患者らしく過ごしてもらう療法として今日定着してきている。
本書は旧知であった出版社の代表が1年間聞き手となり、鈴木医師の話をまとめた本である。鈴木医師はなぜホスピスに強い関心を持ったのか。昔、癌は患者に隠す病気だった。年若く癌になった者は疑心暗鬼の中で痛みに苦しみながら亡くなっていく。近親者をそうした事例でなくしたことなどが契機となった。また、患者の心のケアが重要であることに気づく。同時に患者家族への「共感・共苦」が死を看とる医療として欠かせない。こうした日々の診療の中で求められる医療のかたちを真摯に追い求めてきた市井の医師の記録といってよい。

帚木蓬生『蛍の航跡 軍医たちの黙示録』(新潮社、2100円)、評者・縄田一男。『蠅の帝国 軍医たちの黙示録』に次いで刊行された完結編。著者は精神科医であり、小説家でもある。本書は、シベリア、ラバウル、ニューギニアなどを舞台にした名もなき医師たちの物語だ。作者は戦後生まれだが、『きけわだつみの声』を若いときに読み、文字の力に打ち震えたという。戦争を描いた戦後作家、大岡昇平、梅崎春生、島尾敏雄などを読んできた世代だ。いま戦争をどう描くか。評者はこの小説を、「作者の筆は、戦場体験のある作家たちの描いた“戦争”に見事に追いついている」と賛辞している。そして、命の軽重を問う、この作家の最高傑作と推奨している。

ヤニック・エネル『ユダヤ人大虐殺の証人ヤン・カルスキ』(河出書房新社、2310円)。「本を語る」欄。著者は1967年生まれのフランス人作家。彼はホロコーストにかかわった人物のインタビュー映画「ショア」に登場するカルスキに注目する。その生涯をフィクションを交えて描いたのが本書だ。カルスキはポーランドのレジスタンス運動にかかわり、ナチが行おうとしているユダヤ人大虐殺を連合国側に伝える任務を負う。彼は自分が見たゲットーや収容所の様子を目に焼き付けて、危険な旅に出て、やっと英国にたどり着き伝える。しかし連合国側は無反応で動こうとしない。1945年のドイツ降伏までの3年間に大量の死者を出すことになる。この間のカルスキの煩悶は地獄といってよいだろう。著者は、アウシュビッツ、ヒロシマ、ナガサキといった人間の愚行をカルスキの口を借りてつぎのように語っている。「欧州ではそういう人はほとんどいないが、人間が犯した罪としてアウシュビッツも、ヒロシマ、ナガサキも一緒に考えなければいけないのではないか」と。

朝日――
マーガレット・ヘファーナン『見て見ぬふりをする社会』(河出書房新社、2100円)、評者・保阪正康。前著のホロコーストの事実を伝えても見て見ぬふりで行動を起こさなかった連合国側、これはなぜか。そんな答えを本書に求めたくなる。本書は、見えないふりをする人間心理を脳科学、社会関係学、史実解析から分析している。ヒトラーの側近、「シュペーアはユダヤ人虐殺を見て見ぬふりをする。しかし現実に見なければならない立場になった時、彼は仕事から離れる。絶えられなくなったのだ」と評者は紹介し、著者はそれを「自分の姿を現実と違う形で信じていたときに我々は無力になる」と書いている。
例えば、企業内のいじめを見て見ぬふりをするのは、自分が惹かれるものには注目するが、惹かれないものには焦点を当てないという特有の習性があるという。いうなれば見たいものしか見ていないと言うことだろう。
もう1つ面白い指摘は、ニューヨークの街中で女性が刺殺される。38人が目撃していたが、だれも警察に報告していなかったという。危機的状況を目撃した人が多いほど、なにか行動を起こす人の数は減るということらしい。自分がしなくてもだれかがしていると思いたいのだろう。
[ 2012/01/22 10:48 ] 三室勇 | TB(-) | CM(-)


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