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ホイットニーの決断 ~映画「日本の青空」からみる憲法誕生秘話:常本 一

 安倍晋三首相は、本当に傑出した方である。あれほど批判された96条の改憲要件緩和案をまたぞろ今国会で表明している。まさに歴代首相の中でも傑出。熱烈な支持者、高市早苗がいみじくも言ったという。「安倍内閣で改憲できなくてどの内閣ができるのか!」今まさに、憲法9条は岐路にあるといっていいだろう。

 憲法をめぐる議論がかつてないほど高まっている昨今、筆者は日本国憲法誕生の経緯を描いた映画「日本の青空」(大澤 豊監督 2007年)をみる機会があった。感動、感激した。余計な脚色なしに丁寧に描いている作品。教材としても使えるだろう。ネットの評判もいいようだ。このような良質な映画はもっと多くの人にみてもらいたい。
 ざっとストーリーを紹介する。敗戦後、憲法学者の鈴木安蔵(高橋和也)は民間組織の「憲法研究会」に招かれ、仲間とともに民主的な憲法草案をつくることになる。基本は帝国憲法における「天皇」という主語を「国民」に置き換えるかたちですすめたものの、それでは軍事力の保持を定めたところがそのまま残ることになる。
 それに悩んだ安蔵だったが、妻・俊子(藤谷美紀)が「日本が負けた日、抜けるような青空で希望を感じた」と話したことから、軍事力の項は「抜け」ていてもそれはいつか時がくれば埋めることができるだろうという“秘策”を思いつく。結局、新憲法発布の日、その抜けたところには「戦力の放棄」がうたわれていて、安蔵は満足することになる。
 筆者が注目したポイントだけでストーリーを語ると以上のようになるが、実はこのことは筆者には長年の疑問に解答が与えられたように感じたものだった。周知のようにGHQは当初、日本の当局に新憲法草案を出すように指示したが、提出されたものは旧態依然たるものであったため、いわゆる「マッカーサー・ノート」が示されることになる。
 そのなかには9条関係では、「自衛戦争の放棄」まであったものの、新憲法には明文としては採用されなかった。なぜか? 当時、まだまだ日本軍国主義の残影にアメリカは取り付かれていて日本弱体化が図られていたはずなのに。一方、すでに冷戦が始まりかけていたために日本を西側の一員とするには自衛戦争を全く否定してしまうことはできなかったということだろうか。
 とにかく映画では描かれていないものの、新憲法の起草を担当したホイットニーGHQ民政局長(ウェイン・ドスター)はそのジレンマに悩んでいたに違いない。その彼が「自衛戦争の放棄」を9条に明文化しないとの決断にいたった理由が、この映画をみて理解できたような気がしたのだ。
 すなわち、鈴木安蔵一家と家族ぐるみの付き合いをしていたホイットニーは、実は安蔵から妻・俊子のヒントで得た“秘策”、つまり決められないことは「抜け」たままにして後世の判断に委ねるという手法を聞いていて、それを使ったのだと筆者は推測したい。
 ある時、ジレンマに悩んでいたホイットニーが思い出したように、
“Ok! Let’s do it with Toshiko’s idea! (よし! 俊子のアイデアでやろう!)”
 と叫んだのだ。(と思う)
 もしそうだとするなら、それは後世の我々にボールが投げられていることを意味する。では、どうすべきだろう。憲法とは相容れない自衛隊を国防軍と定めるような、逆方向の明文化が今まさに喧伝されている時でもある。
 筆者はボールをこう投げ返したい。たとえ9条に「自衛戦争の放棄」を明文化できなくても少なくとも国民のコンセンサスを得て、軍事力の均衡ではなく、相手を信じることから始める話し合いでもって紛争を解決していくような世界を目指す。それを鈴木夫妻やホイットニーが仕掛けた“秘策”への回答としたいのである。
 

 

[ 2014/02/07 16:51 ] 常本一 | TB(-) | CM(-)


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