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コラム風「終戦のエンペラー」の戦争責任:井上脩身

 ノンフィクション作家、岡本嗣郎さんは筆者の高校、大学の後輩、しかも勤務していた新聞社の同僚だった。司法担当が長かった岡本さんは50歳の時に独立。浪商の野球部員からやくざの親分になったという経歴をもつ異色画家の一代記でデビュー。やがて、アメリカ留学経験のある恵泉女学園の創設者、河井道(1877~1953)に興味をいだく。彼女の人生を克明に追い、2002年、「陛下をお救いなさいまし」(集英社)を刊行した。


  同書によると、1922年、河井が44歳のときに、アメリカの陸軍中尉、ボナー・フェラーズ(1896~1973)と初めて東京で出会った。その12年後、河井はキリスト教団体の招きでアメリカ講演旅行。陸軍の大学で学んでいたフェラーズが河井を訪ねた。「日米開戦は日本人にとって自殺行為」と河井。フェラーズは軍人でありながら、どちらかといえば非戦論者。やがて二人の間に信頼の絆が生まれた。
 フェラーズは陸軍准将に昇進。戦後、連合国軍最高司令官ダグラス・マッカーサー元帥とともに、その片腕として来日した。天皇の処遇をどうするかが最大の任務だった。アメリカの世論は「天皇の戦争責任を問え」。天皇を断罪すべきか。フェラーズは若いころラフカディオ・ハーンの著書を読みあさり、35年、「日本兵の心理」という論文を書いたことのある日本通だ。「天皇はルーズベルト大統領以上の戦争犯罪人でない」と考えたフェラーズは、河井に意見を求めた。
 「天皇を処刑することになったら、あなたはどう思いますか」。戦時中、憲兵隊本部に呼ばれるなどの弾圧を受けたクリスチャンの河井はこう答えた。「陛下の身にそういうことが起これば、私がいの一番に死にます。血なまぐさい反乱が起きるに違いありません」
 フェラーズは、天皇を訴追しないよう求める文書をマッカーサーに提出。天皇の戦争責任は不問となった。
 岡本さんは「陛下をお救いなさいまし」が出版された翌年、亡くなった。今夏、岡本さんの原作を基に作られたハリウッド映画「終戦のエンペラー」が公開された。映画には河井は全く登場しない。岡本さんにとっては不満だろう。
それはともかく、戦争責任を問わなかったのは、占領政策をスムーズに進めるには天皇の協力が必要との理由からだ。「天皇ハ國ノ元首ニシテ統治權ヲ総攬スル」という当時の帝国憲法上、天皇に戦争責任がないとは言えないにもかかわらず、である。
その結果、日本はアメリカの言いなりになった。戦後68年がたった現在でもそれは変わらない。そしてもう一つ。戦争責任そのものもあいまいになった。極東国際軍事裁判(東京裁判)で、東条英機元首相ら28人がA級戦犯として裁かれたが、日本人自らが戦争責任を追及することはなかった。戦争に対する国民全体としての反省がないまま、元戦犯が政権の座につくなど、ドイツとは異なる戦後史になった。
いま、憲法を変え、天皇を元首と規定する動きが強まっている。戦争責任のない元首があり得るのか。可能ならば元司法記者の岡本さんに尋ねてみたいものである。
[ 2013/08/31 00:51 ] 井上脩身 | TB(-) | CM(-)


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