ジャーナリスト・ネット公式ウエブサイト

ジャーナリストの取材記事、論考などそ掲載するブログ
ジャーナリスト・ネット公式ウエブサイト TOP  >  スポンサー広告 >  犬塚芳美 >  映写室「ひろしま 石内都・遺されたものたち」上映案内:犬塚芳美

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[ --/--/-- --:-- ] スポンサー広告 | TB(-) | CM(-)

映写室「ひろしま 石内都・遺されたものたち」上映案内:犬塚芳美

  ―アートで心の扉を開く― 

 被写体が原爆の遺品というのを忘れてしまう。美しいアート写真の向こうから浮かび上がるのは、それを身につけていた人の奪われた日常だ。広島の原爆を考えさせる、新しい切り口の作品が公開中です。

hiroshima_main_convert_20130802033557.jpg
©NHK / Things Left Behind, LLC 2012

<日本は世界で唯一の被爆国だ> 今なお爪痕が残り、世代を超えて後遺症で苦しむ人もいる。マスコミもまるでそれが義務ででもあるかのように、夏休みでテレビをつける時間が多くなったお茶の間に、原爆に絡んだニュースを届けてくる。私たちから、原爆の記憶が消えることはない。繰り返してはいけない愚考だと、誰もが思う。
<でもそれは被爆国日本の視点だから> 驚くことにアメリカでは、未だに、リベラルな人々の間でさえ、「原爆は戦争を終息に導くのに必要だった」と言われている。パール・ハーバーの攻撃から始まった戦争は、双方が自国の愚考に蓋をして、本質を突き詰めないまま、風化されようとしている。

<そういうアメリカの人々に>、原爆のことを知らせ、もっと考えてもらいたいというのは、リンダ・ホーグランド監督の長年の思いだった。
<監督はアメリカ人宣教師の娘>として京都に生まれ、山口や愛媛で公立の学校に通った。小学4年の時に、教師が黒板に「原爆」と書き、クラスメートが一斉に自分を見た時の震える感情は未だに忘れられないという。その場にアメリカ人は自分一人しかいない。幼い自分がたった一人でアメリカを代表して、クラスの皆に詫びなくてはいけないという心の重さ。この時の記憶はしばしば蘇り、監督にとって人生の大きな宿題となる。その思いを結実させた作品だ。

hiroshima_sub1_convert_20130802033644.jpg
©NHK / Things Left Behind, LLC 2012

 <この作品は、巧みな2重構造になっている> 原爆そのものを追うのではなく、まずは日本を代表するカメラマン、石内都が原爆の遺品を映す様を追い、完成した写真を映し、続いて世界各地でその写真の展覧会を開くさまを追い、写真と観客の反応から、写真の向こうの原爆の悲惨さを浮かび上がらせるという巧妙で複雑なものだ。

<長年広島を避けてきた石内都だが>、出版社からの依頼でこの地を訪れ、平和記念資料館に保存されているおびただしい遺品の、声にならない声に魂を揺すられる。以降広島に通い、平和記念資料館に届けられた遺品の中から、美しくて心に響いたものだけを映した。

<そういう石内の姿勢に共感した監督は>、彼女と彼女の写真を追ってみようと閃く。
「石内さんとは、私の前作<ANPO>以来の付き合いです。彼女の写真集を見て<ANPO>に出てもらって、その忘年会でこの作品のカメラマンの山崎さんに出会いました。そして、自分の長年の宿題の為に、彼女の広島の写真を追ってみたいと思ったのです。

 そして、石内さんの写真を見て素直についていったら、いつの間にかこの作品ができていました。当時の悲惨さを訴える映画はたくさん作られています。でも、そういう作品では、アメリカ人に見てもらうことは難しい。悲惨であればあるほど、皆が吾関せずと目をそむけます。原爆と今の自分たちを結びつける別の切り口が必要でした。
石内さんがよみがえらせた、美しい遺品の数々。美しいだけに、それを身につけていた人の一瞬で消し去られた日常が浮かび上がります。その日常は、今これを見ている貴方とそんなに違わない。又、原爆で一瞬に奪われた命は何万人ですが、命を落とされたのは私たちと同じ一人一人。それぞれの人生と生活が一瞬で消え去ったことに気づいて欲しいと思います。

 でも、私がこの作品で気をつけたのは、戦争が悪いとか原爆が悪いとかの、明確なメッセージを与えることではありません。もっとより多くのことを、この向こうに想像してほしいのです。

 石内さんの写真が主体ですが、後半30分は意識的に彼女の存在を消しています。この作品はアーティストを主人公にしたのではなく、彼女のアートを中心に置いたものですから。アートは素晴しい。現実を超越する力を持っています。時を止めて今も昔もなくなります。見ている人と表現されているものの時間がシンクロしますよ。又、石内さんは遺品そのものではなく、遺品の持つ魂を映しています。ある意味で現代のいたこですね。まるで石内さんが魔法をかけたかのように、遺品がそれに秘めている物語を語っています。静かな展示室がある意味で饒舌で」と、語るリンダ・ホーグランド監督だ。

<この作品の中では>、私が始めて聞く衝撃的なことも明かされている。たとえば、原爆に関するマンハッタン計画には、アメリカだけでなくカナダとイギリスも関与していたこと。原爆に使われたウランを掘ったのは極東に住んでいたカナダの先住民で、彼らは唯一広島で原爆の謝罪をしているということ。というのも、採掘に関係した男性は20年以内に皆死んでしまった。原爆がどういうものであるかを理解し、誤らずにはおれなかったのだ。心の痛みを持つものこそ、痛みを共有できるということだろう。

この作品は、8月3日から梅田ガーデンシネマで上映中
      9月14日から神戸アートビレッジセンター にて公開。
[ 2013/08/10 07:22 ] 犬塚芳美 | TB(-) | CM(-)


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。