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メディアウォッチング「メディアは東日本大震災の復興を正しく伝えているだろうか」:南亭駄樂

 新聞やテレビを見ていても、被災地の復興の全体的なイメージがつかめない。ときどき魚の水揚げがされたとか商店街ががんばっているとか、単発的に活動が紹介され、被災者がスポーツで活躍したというエピソードが記事化されるが、街作りはどこまで進んだのか、コミュニティは再生されたのか、人びとの生活はどう変わったのか、がまったくわからない。人びとは、津波で街が消えた危険区域をかさ上げしたのか、高台に移住したのか、それを決めるための住民合意はどういうふうに行われているのか――メディアは、コミュニティ再生のために住民が経験している苦渋の選択や試行錯誤を新しい社会建設の試みとしてもっと伝えなければならないのではないだろうか。
巨大防潮堤図


 7月18日の東京新聞に「防潮堤 被災地で考えよう」という記事を見つけた。宮城県気仙沼市の住民団体「海べの森をつくろう会」は巨大防潮堤のあり方を検討しており、それに協力している横浜市の団体が、海岸の清掃や植林に向けた作業を手伝うボランティア活動ツアーを企画しているという内容だ。
 記事によると、気仙沼市は海岸76カ所で、高さが最大で10メートルを超える防潮堤を新設したり、既設の防潮堤の高さを2倍にするなどの計画を持っているが、住民から反発の声も上がっており、住民合意が得られたのは64%にあたる49カ所だという。
 海岸線の景観が一変する巨大防潮堤の建設については、震災直後から問題があるという指摘がされてきた。人命と景観(それにつながる観光産業や漁業、生活者の心情、地域文化など)の問題はそう簡単なものではない。地域住民がどのような共同体を作り上げるのか、どのような生活スタイルを選ぶのか、新しい社会創造への苦しいチャレンジの一環なのである。それに対して、国や県などの行政は、単純に巨大防潮堤の建設や集団移住を復興の前提として住民に合意形成を迫り、その遅れをメディアは「進まぬ復興」として報じてきたように思う。

 巨大防潮堤の問題については、日本自然保護教会が以前から指摘をしており、同協会の会報『自然保護』(2013年7・8月号)では特集「このままでいいのか!? 防潮堤計画」として警告を発している。
同誌は冒頭で「今、東北の被災地をはじめ全岡各地で、巨大な防潮堤の建設計両が進もうとしていることをご存知でしょうか?」と訴える。
東日本大震災からの復興を目指す「全国防災対策費」(5年間で約19兆円)のうち1兆円程度は被災地以外の防災・減災対策にも使用可能であり、「国土強靭化」を進める安倍政権の下で、全国で新規公共事業が増え、海岸や河口を埋める防潮堤計画が建設される恐れがあるというのだ。実際に、静岡県浜松市の遠州灘沿岸では、総延長17.5kmにわたって高さ約13mの防潮堤建設計画が進行中であり、徳島県では那賀川左岸の堤防を河口から2.7kmにわたって7.8mにかさ上げする地震・津波対策事業が予定されている。
 もちろん、東日本大震災の被災地では、そのような計画がどんどん進行している。岩手、宮城、福島の東北3県における巨大防潮堤建設計画の規模は総延長約370km、予算は約8200億円で、東北3県の自然海浜は全体の7%にまで減少しているという昨年度の調査結果もあるという。

気仙沼市小泉地区では、地域主導でまちづくりをやろうと、これまでに20回以上ものワークショップを行い、高台移転計画を進めてきた。その小泉地区でも、海岸には14.7mの防潮堤建設が予定されているが、防潮堤計画の具体的な内容を理解している住民は多くないという。
「未来の小泉の住人は、何を残してほしいのか。巨大防潮堤? それとも豊かな自然環境? 今は、それをみんなで考えていくための時間がほしい」と阿部正人さん(小泉CooI親父の会)は書いている。

日本自然保護協会は、巨大防潮堤の問題として「/海と陸のつながりが分断される」「/希少な海岸の生態系が壊滅する」「環境アセスメントがなされずに計画が進む」「構造物で海岸浸食などが悪化する」「代替案の、検討がない」「住民の意見が、反映されない」「海に対する、危機意識が薄れていく」「人と海が離れ、地域知が消失する」などを挙げており、「防潮堤に頼らない海岸のまちづくり」を訴えている。そして、被災地現地には、真剣にそれを求め、取り組んでいる人びとがいる。しかしメディアでは、その取り組みは国や県の復興計画の前に隠されている。

メディアは、こういう現地の日々の取り組みと葛藤をこそ、継続して報じるべきであろう。
[ 2013/07/19 05:57 ] 南亭駄樂 | TB(-) | CM(-)


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