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夜間中学その日その日 (295)   守口夜間中学 白井善吾

夜間中学が高校教科書に登場
夜間中学について高校教科書「日本史A」(東京書籍)は2頁にわたって扱っている。2013年4月から使用が始まった。この教科書でどんな高校の授業が展開されるのか興味深い。2012年9月夜間中学廊下にこのページを拡大コピーして掲示した。

「東京にいる高校生の孫に知らせました。さっそく教科書を探したそうですが、載っていないといってきました」と夜間中学生が言ってきた。「来年4月から使われる教科書に載るんです」と答えたが「そうですか」と不満顔であった。
交流のため訪れた高校生にこの掲示物の前で「来年4月からこの教科書で勉強してください」と話している夜間中学生の姿があった。

毎日新聞、山成孝治記者の署名記事、守口夜間中学の校舎の遠景の写真、学習している写真とともに共同作品「わたしはやかんちゅうがくせい」の構成詩が掲載されている。
  
わたしはやかんちゅうがくせい
夕方になったらいそいそよういします
むすめに「ほんまにすきやねんなあ」いわれもって
むすこに「えらいふしぎやなあ」いわれもって
うきうきわくわく学校へきます
「学校いってんねん」しっている人にせんでんします

よみかきでけへんことどれだけくろうだったか
いきがとまるほどかなしいことがあった
はぎしりするほどくやしいこともあった
心のなかには雨の日がおおかった

いまは小さい空に日がさしたように
一文字おぼえるたびにせかいがひろがります
みちをあるいているとき はりがみをみたとき
テレビみてるとき でんしゃやバスのるとき
びょういんにいったとき やくしょへいったとき
しごとするとき しょめいかくとき
エンピツもつのがたのしい
わすれてきくのもまたたのしい

学校きてるときはわたしだけのじかん
いまとむかしの二ばいぶんのじかん
とりもどしていってだんだん
わたしはわかくなっていくようです
よむことかくことしることはわたしのかつりょく
雨がふってもかぜがつようても学校へきます
きょうもかいた文字が
ないてますわろうてますおこってます

さて教科書の記述を一部紹介すると
現在, 日本には多数の在日外国人の人たちがいる。彼らが日本にやって来た背景には, さまざまな歴史がある。また,彼らが日本人や他の外国の人たちと,たがいの文化・言葉・歴史などを学び交流する国際理解の場は,時代とともに変化している。ここでは,夜間中学を事例に,在日外国人の歴史と交流の歴史について調べてみよう。
この前書きの後「夜間中学を知っていますか?」「在日外国人と人権」「夜間中学と在日外国人の歴史」「夜間中学生の詩を読んでみよう」の小見出しがある。最後の小見出しの内容を紹介する。
   ―上の夜間中学生の詩を読んでみよう。ひらがなと簡単な漢字で書かれたこの詩には、長い間日本語の読み書きができなかった在日韓国・朝鮮人の女性の思いが書かれている。夜間中学は、さまざまな国籍、年代の人たちが読み書きや勉強をする場であり、彼ら同士や教師が、おたがいの異なる文化や歴史、言葉を学ぶ場でもある。単なる知識の習得ではなく、学びあいを通じて人間性が回復される場、それが夜間中学である。日本人も海外に行けば外国人である。グローバル化の時代を生きるためには、歴史を振り返り、日本の近現代における在日外国人の歴史と交流の実際を知ることが大事である。そこから異文化を相互に理解し、多文化が共生する道も開けてくるだろう。夜間中学はそのことを教えてくれる貴重な場である。

 この記述は私たちも共感できる。夜間中学が今存在することの意味を改めて再確認している。この記述の対極にあるのが今回の橋下大阪市長の日本軍「慰安婦」や在沖米軍に関する風俗業発言だ。この人が公職にいて政党代表であることに驚く。
 ある夜間中学生は「わたしたちと話し合いを避け、就学援助、補食給食を打ち切った知事の時とおんなじ、(よりそう)心はあるのか?大阪に住む者として恥ずかしい」と語っている。

この共同作品を作成した1997年当時の夜間中学生が多く通っている、守口市成人基礎学習講座「あけぼの教室」を訪ね、教科書に載っていることを話すと「わたしもこの詩の、ないてますわろうてますおこってますのところが特に好きなんです」「夜間中学があることの意味が伝わり、夜間中学がふえるといいですね」感慨深く語っていた。
[ 2013/05/24 00:40 ] 寄稿 | TB(-) | CM(-)