ジャーナリスト・ネット公式ウエブサイト

ジャーナリストの取材記事、論考などそ掲載するブログ
ジャーナリスト・ネット公式ウエブサイト TOP  >  スポンサー広告 >  寄稿 >  夜間中学その日その日 (294)   守口夜間中学 白井善吾

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[ --/--/-- --:-- ] スポンサー広告 | TB(-) | CM(-)

夜間中学その日その日 (294)   守口夜間中学 白井善吾

麦の穂が出るころ(その3)
松の葉 一つとってもいろいろ種類があるんですね。「針のようにとがって痛い」。「針の漢字を頭の中で書いてください」。漢字を確かめるとき、私はそんな言い方をする。書きましょうというと、書くことに集中するため、話が途切れてしまうからだ。「針は鉄でできているから」そこまで言うと「かねへんですね」「かねへんにじゅうをかきます」と返ってくる。そこで黒板に針の漢字を大きくゆっくり書く。


次に松と私たちの生活について考えることにした。
「松の木は何に利用していますか?」と質問をした。
「そら、杭に使います。昔はビルも基礎杭は松の木でした」Tさんがすぐに返してきた。「松脂があるからなかなか腐らないからです」
「松脂で思い出したけど、戦争中松の根っこを掘るのをやりました。小学生の勤労奉仕です」「“しょうこんゆ”と言っていました。特攻隊が乗る、飛行機のガソリンに使う言ってました」。松根油について取り上げたいと予定して準備はしていたが夜間中学生のほうから出てきた。
そこで同僚がネットで見つけた当時のポスターを黒板に張り出した。日の丸の双発の戦闘機が急降下している絵が描かれていて、「全村をあげて松根赤だすき」と赤色の文字で大きく書かれ、「松根油緊急増産運動」「松の根から重油とガソリン」ポスター作製者として「陸軍省・海軍省・農商省・全国農業経済会」と黒で書かれている。右から左に文字が並んでいる。現在と反対だ。
「ほんまに使われたんやろか?枯れた松の根っこが良いといっていました。ほんま、小学生には重労働でした」。勤労奉仕で小学生時代に松の根っこ堀をおこなったという夜間中学生はこれまでも何人かいた。

「マツタケが生えるのはどの松でしたか?」「アカマツや。子どものころはどこの山でもとれたけど、今は全然です」「はえるとこが分かっていたから、そこへ行けば必ず採れた、しかしいまはあきません」

黒板に「松明」と書いた。教室が静かになった。「しょうめい?」「まつあかり?」いくつか答えが返ってきた。「辞書で松の漢字を探すと出てきますが、しょうめい、まつあかりに関係していますが昔の懐中電灯」。みんな慎重になったのか、答えはなかった。「たいまつ」と漢字の上にルビを振った。「あー、なるほど」「子どものころ、懐中電灯はありません。みんなたいまつでした」中国山地の村で育ったSさんはすぐに反応した。「松やにがあって明るいんです」と付け加えた。

「こはく色は何色?」と質問すると、「黄色と茶色の間ぐらいの色」「ウイスキーの色」。「宝石のこはくは松やにの化石です」。「あー聞いたことあります」。「こはくの中には松やにから出られなくなった昆虫が入っていることがある」

「次に松のつく地名をあげてみましょうか。すぐに答えないでまず書いてみましょう」と言ったのだが、夜間中学生は慣れていないのか、思い浮かんだ名前を発表していった。真っ先に出てきたのが、松江、黒板に書き終わるのを待たず、松山、松本、そして松代がでてきた。「長野の松代ですか」「そうです。大きな地下壕があるんです」Tさんはこのように答えた。次の機会にまたとりあげてみようと考え、質問を続けた。松阪、松原まででそれ以上はでてこなくなった。そこで調べ方を紹介した。地図帳の「さくいん」で「ま」の欄で調べる方法である。「たくさんある。松岡、松川、松前、松戸‥」。地図帳の小さい活字を夜間中学生は目を凝らして読み上げていく。教室にはいくつか拡大鏡を置いているが、それも使わず読み上げている。「千葉県の松戸市には自主の夜間中学があります」
それまで黙っていたRさん、「松の葉を敷き詰めたうえに、出来たての韓国のお餅を置くんです。香りが移って、おいしいお餅ができます。私はあの匂いが大好きです」。「松の実も料理に使います。栄養があるんです。キムチのなかにもいれます」話は食べ物の話に戻っていった。
 一人一人の語りの中から、理科的観点を加え、社会を見抜く学習の展開に拘っていきたい。
[ 2013/05/17 10:59 ] 寄稿 | TB(-) | CM(-)


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。