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夜間中学その日その日 (291)   守口夜間中学 白井善吾

麦の穂が出るころ
「学校でいただいた麦、穂が出てきました」「遠くで見ていたんですが、身近で見られたことめちゃめちゃ感動です」
 去年11月、入手した小麦と大麦の種を希望者に配った。成長の様子を観察してその都度、このように報告があった。この話に触発され、今年最初の理科の時間、麦と蓮華草とルーペ、双眼実体顕微鏡を教室に持ち込んだ。


「今日は何を見せてもらえますか?」観察の準備をしていると、机の周りを取り囲んで、興味深そうに覗き込んで話しかけてきた。「あっ、麦ですか?」ビニール袋から少しだけ顔をのぞかしているのを見つけ、「何麦ですか?」と尋ねてきた。「何でしょう。授業の時、皆さんに聞きます」と答えた。
 ツバメ、開花日、(造幣局の)通り抜けについて考えたあと、根っこから引き抜いてきた麦を一株ずつ配った。それを手に取ってじっと見ていたAさん、麦ふみのことを話し始めた。「霜が降りた麦畑で、一生懸命踏みました。茎が折れ、別の芽が伸びて、穂数が増えるんです。はぁ、はぁ、白い息を出しながら、麦ふみしました」
 Bさんは脱穀の方法を話し始めた。千歯扱き(せんばこき)に穂先をはさんで引き抜くと、穂と茎を分けることができる。「バリバリ、引き抜くときの音を思い出します」
 穂先を上から下、下から上に撫ぜることを指示した。「引っかかって痛いです」「そうや、刈取りの時、ほんま痛かった。汗に麦のほこりがくっついて顔が、首がヒリヒリいたかった」。双眼実体顕微鏡で見ると尖ったガラスの歯が一方方向に並んでいる。「これは痛いわ」「外敵から穂を守っている。麦なりの知恵ですわ」Cさんの解説が入る。
 「先生、これなんですか?ふちが紫色の塊」「麦の花です。おしべです」。
 一段落してDさんは麦飯の話を始めた。「米と混ぜて炊くと、軽いムギはコメの上に集まって炊き上がる」子どものころから炊事の仕事をしてきたDさんは炊き上がったご飯をよそう時、オモニがやっていたことを話し始めた。
 麦の集まった部分を横に除け、米の部分を父や体の弱かった兄に食べさせていました。残ったところを混ぜてみんなで食べていました。
 そのあと、私も話しに加わった。弁当に麦ご飯を持っていっていた小学生の頃のことだ、弁当のふたをあけると、ちょっとにおいがする。「見てくれ」も悪い。家に帰って母に「恥ずかしい」と訴えた。母はなにも言わなかった。悲しそうな顔に変わったことは子ども心に残っている。いけないことを言ってしまった。そんな話をすると、Dさんすぐに返してきた。「麦ご飯のほうが栄養があって、体にええねん。私は子どもにそんなふうに言っていました」。「私は今も時々食べています。とろろ汁をかけて食べるとうまいです」とEさんが付け加えた。「夏になったら、晩御飯では臭いがしていた」「韓国では麦ご飯が食堂で出ていますよ」「(守口の)大日に麦ご飯の店がある」
 麦わらの利用について話題が移っていった。火力が強くてかまどや、風呂焚きに使いました。「『むぎわらぼうし』今うってるやろか?涼しかった」「取入れ作業のとき、ふかしてきた新じゃがに麦わらの茎を突き刺して食べました」「わらぶき屋根のふき替えに麦わらを使います」。
麦秋(ばくしゅう)時の農作業は特に大変だった。梅雨の始まるまでに収穫を終えないと、収穫できず、雨で芽が出てしまうことがあった。空を眺めながら刈り取り作業をした。牛のおしりをたたいて、耕し、水を入れる。そして田植だ。刈り取った麦の株は腐らず、裸足の足裏を突き刺す。血が出ることも珍しくなかった。子どもの頃の話が次々とつながっていく。「(収穫した)小麦を口に入れ噛んでいるとチューインガムのようなものが残ります。ガムやガムやいうてよく噛みました」。
「昨日いただいた大麦、家に持って帰ると、『なつかしいなぁ』言って、仏さんの花に活けていました」。一本の大麦から学習が広がっていく。(つづく)

[ 2013/04/26 07:34 ] 寄稿 | TB(-) | CM(-)


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