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コリア閑話 「戦時下?のソウル」  :波佐場清

3月11日~14日、ソウルに行ってきた。米韓両軍が合同軍事演習を開始し、反発する北朝鮮が「休戦協定の白紙化」を宣言した、そんな最中である。


11日午前、関西空港を発ち、正午前ソウル金浦空港着。この季節としては穏やか日和となった金浦空港にはどこかのどけさも漂っていた。出掛け、関空で「緊張が高まっている」との朝刊を読み、少し身構えていただけに正直、ちょっとした「肩すかし」を食らったという感である。


空港からタクシーで市中心部に向かった。行きつけのホテルに着くまでの小一時間、運転手にいまの様子をきいた。60がらみ、見るからにソウルの街をしたたかに駆け抜けるベテラン運転手といった風情である。


————緊張している、と聞いて来たんだけど……
▽お客さん、日本からだね。韓国の新聞もそう書いているけど、わしらはもう慣れっこだよ。北の奴らは、いつもあの調子だ。ほんとうは何もできやしない。これまでもずっとそうだった。要するに口だけ。今回もそういうことだろう。


————今回は違うようにもみえる。北の指導者も替わった。
▽わしらは軍隊で訓練を受け、実際に銃を撃ったりしている。日本人はよく分かってないようだ。北に何ができるというんだ。戦争は国力、武器で決まる。万一、ソウルに銃弾が一発飛んできたら、平壌こそ、瞬時に火の海だ。わが方の武器は百発百中だが、北の武器の精度は高くない。そのことを一番よく知っているのは北のほうだ。
▽確かに北は核を持っている。しかし、北がそれに手を付ければ、その瞬間、北のすべが終わる。北もそこまで無鉄砲ではない。
▽だいいち、国際情勢はそんなふうになっていない。米国はもちろん、ロシア、中国も戦争を望んでいない。日本だってそうだろう。北は孤立している。戦争なんか仕掛けられるものか。日本人にはそのへんのところがもう一つよく分からないようだ。


————でも、2年余前、黄海側の延坪島に砲弾が撃ちこまれた。民間人を含む犠牲者も出た。
▽局地戦はあるかもしれない…。しかし今回、もし延坪島のようなことがあれば、わが軍は北の指揮拠点も含めて徹底的に反撃する。北がいくら意気込んでも手出しはできない。


————日本からの観光客が減ってきていると聞いた…。
▽確かに、そんな感じがする。でも、それはこのところの円安の影響だろう。減ったと言っても、市内の明洞や梨泰院に行ってみたら分かる。日本人観光客はいっぱいいるし、何と言っても中国人がこのところ、ぐんと多くなってきている。米国人や東南アジア方面からの観光客も多い。そのことだけを考えてみても、北は戦争を仕掛けられるもんか。


と、いうような話をしているうちにホテルに到着。それにしても、ソウルでタクシーの運転手と話すたびに思うのだが、彼らは国際情勢についてよく語る。中国、日本、ロシア、米国……。地政学的に絶えず外国人と直接向き合ってきた人たちの、それが日常というものなのだろうか。


それはともあれ、ホテルのロビーでは甲高い中国語が飛び交い、日本の若い女性たちの姿も目についた。午後、繁華街の明洞へ出かけてみると、運転手が言ったとおり。中国人の団体客ら外国人の買い物客がわんさと押しかけている。


ソウル滞在3泊4日。新聞、テレビは、韓国企業が進出している北朝鮮内の開城工業団地には3月11日以降も軍事境界線を越えて毎日800人を超す韓国企業関係者が行き来し、通常通りの生産活動を行っていると伝えている。
韓国では比較的リベラルな論調で知られる京郷新聞の3月13日付4コマ漫画は左に添付したようなものだった。簡単に説明すると——
(元のコリア閑話ではまんがが表示されたが、転載のジャーナリスト・ネットでは表示されず)


①北のテレビ・アナウンサーは「最後の決戦の時が近づいている」と叫んでいる。






②街行く人たちはみな、普段通りの表情だ。









③「火の海にする、と言っているのに怖くないのかね」とおじいさん。






④な~に、もうすでに火の海のなかにいるというのに……

最後のコマの、火を噴く怪獣の腹に見える「1%」は、資金力にモノをいわせる財閥系の大型店。燃えているのは、零細なパン屋、もち屋、昔ながらの市場……



日本人観光客にも人気の板門店ツアーはどうなっているのか。ツアーを扱う旅行代理店をのぞいてみると、ここも普段通りだという。カウンターで説明してくれた30代半ばにみえる女性係員の、次のような言葉が心に響いた。

「北が攻めてこないかって? そりゃ、心配でないとはいえない。戦争は起こるかもしれない。でも、私たちはどうすればいいの? 日本人は地震が心配だからと言って、日本を逃げ出すでしょうか?」

旧知のジャーナリストからも話を聞いた。

いまの状況について尋ねると、「ほら、こんな具合なんだ」と韓国紙を取り出して見せた。見ると、南北緊張のさなか、韓国軍将校らがゴルフを楽しんでいたことが分かり、大統領府が調査に乗り出したのだという。

問題になったのは、3月11日から始まった米韓の合同軍事演習「キー・リゾルブ」を目前に控えた9、10両日のラウンド。週末だったこともあり、ソウル近郊、泰陵の軍人専用ゴルフ場には軍幹部らがどっと押しかけ、75組約300人がプレーを楽しんだというのである。

北朝鮮側は3月11日を期して「休戦協定白紙化」「南北間の不可侵に関する合意の全面破棄」「板門店連絡ルートの閉鎖」を宣言していた。要するに、「非常時に、たるんでいる」というのである。

友人はそんな記事を解説しながら、こうも付け加えた。

「南北間の軍事境界線は米軍任せ、という空気が韓国軍にはある。朴正熙大統領が暗殺された後1979年12月の粛軍クーデターのさいも、のちに大統領になる全斗煥、盧泰愚らのグループが北と対峙する前線を放り出してソウルに駆け付けた。そういう米軍依存体質が、今回のゴルフ騒動にも表れている」

要するに、南北間の衝突がそのまま米軍を巻き込む構造が、ここにはあるというわけだ。北朝鮮が米国との直接交渉に執着する所以でもある。友人はさらに、次のようにも言った。

「北は勇ましいことを言っているが、米韓の軍事演習の期間は絶対に手出しはしてこない。2010年11月の延坪島砲撃事件も韓国軍がある事情から直ちに反撃できる態勢にないことを知り、絶妙のタイミングをはかって攻撃してきたことが明らかになっている」

北朝鮮は、いまの休戦体制がいかに不安定で、危険であるかをクローズアップさせている。米国を直接交渉の場に引きだして核やミサイル、平和の問題を話し合い、ゆくゆくはいまの休戦協定を平和協定にかえようとしているとみて間違いないだろう。



今回、改めて感じたのは平壌からの報道と、ソウルの一般市民の間の大きな落差である。

そんな思いでいるところへ、ワシントンから気になるニュースが飛び込んできた。ヘーゲル米国防長官が3月15日、北朝鮮の核・ミサイルに対抗するため、アラスカ州に新たに14基の地上配備型の迎撃ミサイル(GBI)を追加配備すると明らかにした、というのである。

3月17日付朝日新聞(ワシントン=大島隆、望月洋嗣記者)によると、北朝鮮の核ミサイルが米本土に到達する脅威が現実のものになる数年後を見据えた「先回り」なのだとヘーゲル長官は説明しているという。

この記事には、オバマ政権の核政策に関与した核問題の専門家ジョセフ・シリンシオーネ氏の「まだ存在もしない北朝鮮の脅威に対し、米国が役に立たない迎撃ミサイルを投入することに唖然とする」とのコメントも添えられている。

背後にはやはり、産軍複合体からの要請があるのだろうか。米国はやはり、「北朝鮮の脅威」を必要としているのだろうか。北朝鮮は結果としてそれに協力することになるのだろうか。
                                             
[ 2013/03/19 23:30 ] 波佐場 清 | TB(-) | CM(-)


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