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映写室「ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの」:佐々木芽生監督インタビュー:犬塚芳美

-クラウドファンディングで集めた資金― 

<ニューヨークに住む>、ハーブ&ドロシーの二人は、長年コンテンポラリー・アートを集めてきました。自宅のベッドの下に、送られてきたそれらを押し込んでは、又週末になると、ソーホーに行き、気に入った作品を買います。

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そんな作品がたまりにたまって、もう部屋にも入らない。年も取ってきました。二人は今後を案じ、すべてのコレクションを寄贈すると決めます。その数は、ナショナル・ギャラリーの手にすら余る、3000点以上でした。こうして、ナショナル・ギャラリーの主導で、全米の50の美術館にコレクションを50ずつ寄贈するというプロジェクトが始まります。

 <このドキュメンタリーを作ったのは>、前作「ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人」で二人を紹介した、佐々木芽生監督。この作品はその続編で、50×50と名づけられた、遠大なプロジェクトを中心にまとめられました。
 監督の映画の製作手法も画期的で、大手に頼らず、クラウドファンディングという、広く一般から資金を集めるという、日本ではまだ新しい方法をとっています。コレクションの膨大さもさることながら、心打たれるのが、二人の生き方です。佐々木監督にお話を伺います。

《佐々木芽生監督インタビュー》
―この作品を作ろうと思われたきっかけは?
佐々木芽生監督(以下敬称略):2008年に「ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人」という1作目を作り終えました。この作品はその半年後から撮り始めています。1作目はまだ公開もされていない時でした。50×50のプロジェクトが始まり、最初の展示会がインディアナ・ポリスの美術館で開かれることになったんです。二人が見に行くというので、同行し軽い気持ちでカメラを回したのですが、二人のコレクションを始めて美術館で見て、自分は何も解ってなかったと、気がつきました。自宅に置かれたコレクションは見ていましたが、こんな風に、美術館で、キュレーターの手で、作品が最高に見える環境を整えられて、額縁に入れられ、しかも50点を同時に見ると、凄いなあと圧倒されました。二人のコレクションをこんな環境で、もっともっと見たいと思ったのです。

―二人のコレクションは、二人の作品だと思ったわけですね?他の人に描いてもらって、映画の中に気に入ったら自分の名前を入れるアーティストが出てきましたが、あのようなものだと?
佐々木:そうです。その通りです。二人は、特にハーブは若い頃絵を描いていました。映画の最後に出る作品がそれですが、でも自分には才能がないと、いつの間にか描くのは止めて、コレクターとなりました。二人は公務員ですが、ドロシーのお給料だけで生活し、ハーブのお給料は全て、コンテンポラリー・アートの購入に当ててきたのです。それが50年近くにも及びました。二人の行動は、無名の作家の生活や活動を支えることにもなったのではないでしょうか。誰も振り向いてくれない時に、ハーブとドロシーが認めてくれ、しかもお金を出して買ってくれたというのは、アーティストにとって限りない支えだったと思います。作品を買うだけでなく、そういうアーティストたちと、二人はずっと交流してきました。

―コンテンポラリー・アートは好きなのですが、難しくてよくわかりません。日本ではほとんど紹介されませんが、アメリカではコンテンポラリー・アートにそういう環境があるのですね?
佐々木:アメリカでも一緒です。一般的には難しいと思われています。ニューヨークは特別で、田舎に行くとコンテンポラリー・アートに触れる機会は少ないのです。だからこそ、二人のコレクションに意義があるのではないでしょうか。確かに難しいけれど、子供たちの反応を見ていただくと解るように、アートの解釈に間違いは無い。それぞれが自分の思うように、色々な視点で受け止めればいいのだと思います。

―この作品は、クラウドファンディングで制作費を集めたんでしたね? 目標額を越えて、1千万円以上集まったと伺います。
佐々木:ええ、幸いにも、前作がヒットして、ハーブとドロシーの二人と私が認知されていたのも、良かったと思います。私も資金を集めるために、色々な努力をしました。まず、前作を色々なところに無料で貸し出し、カフェでもどこでもいいので、上映してくださいと呼びかけました。上映に経費がかかるので、最低限のそれは仕方ないにしても、基本的に無料でとお願いして、そういう上映会がたくさん開かれたのです。私自身も、頻繁に日本に帰り、トークイベント等で呼びかけました。そういう理由で、支援してくださる方が多かったんです。100万円が2組集まっていますが、それは個人で出してくださったのではなく、私の出身地の札幌の同窓生が中心になって基金を立ち上げてくださり、多くの方が出資してくださった結果です。又、日本ではインターネットやクレジットカードでの支払いに抵抗があると聞いたので、郵貯口座や銀行口座と振り込み先も多くしました。最後のカウントダウンはネット上でも盛り上がって、数時間で100万以上集まりました。

―そんなに集まったのは何故でしょう? 
佐々木:1作目で二人に惹かれた方が多く、もっと見たいと思ってくださったのでしょう。二人のコレクションというより、そういう生き方をしてきた二人に興味を持ったのだと思います。
―そんな調子で進んできたのに、ハーブが亡くなった後の、ドロシーのコレクション終了宣言には驚きました。
佐々木:私も驚きました。でも、ドロシーにしたらもういいという気持ちなのでしょう。もともとコレクションは、ハーブが言い出し、ハーブに従う形でドロシーも一緒に進めました。丁度二人が結婚して50年目にハーブが亡くなったのですが、ドロシーは、自分が誰だったのか思い出せないと言っていました。二人で一人という生き方をずっとしてきたので、これから一人でどう生きていけばいいのか、彼女は自分を取り戻すのに必死でした。今は、すべてのコレクションを寄贈し、飼っていた動物もほとんど手放し、がらんとした部屋に住んでいます。映画にも映していますが、残されたのはハーブが昔描いた絵だけと言うのも、感慨深いものがありました。でも、がらんとした部屋で、ドロシーは今後の自分の道を見つけるのではないでしょうか? すべてを処分したあの潔さに、それを感じ足し、皆さんにも希望にしていただきたいです。

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―二人は最初から撮影に協力的でしたか?
佐々木:撮影には協力的だったのですが、自分たちが映して欲しいものだけを見せてくれる感じでした。4年間と撮影に長い時間をかけていますが、二人の素顔に触れるには時間が必要だったのです。
―この作品の邦題には、二人からの贈りものという言葉がありますが?
佐々木:私達は二人から色々なものをいただきました。まず、膨大なコレクションですね。彼らが初期に買った作品は値上がりしているので、コレクションの途中で売って、さらにスキルアップすることも可能でした。コレクションは小品が多いのですが、一般的なコレクターだと、売り買いしながら、コレクションのスキルアップをしていきます。でも彼らはそれをしなかった。もちろん自分達の為に売ることなど考えてもいません。お金に関してはとっても潔癖です。自分たちは公務員で、長年アメリカの税金で暮らしてきたから、その恩返しをしたいと考えています。とても質素に暮らしていますが、映画の上映に関するイベントでも、私に対しては「自分のお金にこれを作ったのだから、あなたは謝礼を貰いなさい」と言ってくれても、自分たちは受け取りません。私が苦しい中で映画を作っているのがわかるので、一緒に食事しても、いつも私の分も出してくれます。色々な意味で、アーティストを支援してくれているなあと思いました。

―ハーブは実はコレクションの分散に反対だったのですね? アーティストの中にも、そういう方がいると?
佐々木:彼の死後にわかったことですが、ハーブはコレクションはまとまっていてこそ意味があると思っていたようです。それになんと言っても、国立のナショナル・ギャラリーでうすから、アーティストにしたら、そこに自分の作品が所蔵されているというのはステータスになります。
―でも、ナショナル・ギャラリーに全てがあると、結局は日の目を見ることがなかったかもしれないですよね?
佐々木:そうなんです。アーティストによって考え方は色々で。50×50のプロジェクトは、5年以内に展示会をするという条件が課せられています。もうすぐ期限が来るので、今年はまだのところも展示会をするかもしれませんね。この作品のポスターは、日本版とアメリカ版で違うのです。アメリカでは皆に歳をとることへの恐怖があります。だから二人が若い頃の写真になる。日本版は、二人が自分たちのコレクションの展覧会巡りをするときの映像ですが。3月末の日本公開に合わせて、ドロシーが舞台挨拶に来ます。楽しみになさって下さい。

<インタビュー後記:犬塚> 
元NHKのキャスターという佐々木芽生監督は、エキゾチックな美人です。ハーブ&ドロシーの物語も、監督の制作手法や行動力も、とてもスケールが大きい。小さく纏まりがちな今、目からうろこが落ちる思いがしました。

3月30日からなんばパークスシネマ、
梅田ガーデンシネマ、
4月神戸アートビレッジセンター、
      順次京都シネマ にて公開
[ 2013/02/26 22:37 ] 犬塚芳美 | TB(-) | CM(-)


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