ジャーナリスト・ネット公式ウエブサイト

ジャーナリストの取材記事、論考などそ掲載するブログ
ジャーナリスト・ネット公式ウエブサイト TOP  >  スポンサー広告 >  Web管理室 >  日曜新聞書評欄簡単レビュー:三室 勇

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[ --/--/-- --:-- ] スポンサー広告 | TB(-) | CM(-)

日曜新聞書評欄簡単レビュー:三室 勇

今週も日曜日恒例の新聞書評欄から。

朝日――
高村薫『冷血 上下』(毎日新聞社、各1680円)、評者・中島岳志。評判の高い著者の近作である。「週刊朝日」では、永江朗が2012年の最高の書物と書いていた。
 「街にクリスマスソングが流れるころ、歯科医師の一家4人が皆殺しにされる。犯人はケータイサイトで知り合った若者2人。目的はカネでもなく恨みでもなく、ただなんとなく。残酷ではあるけれども凡庸な事件を、徹底的に緻密に描いたのが高村薫『冷血』である」。永江の紹介は続けて、「上下2巻、3章からなる。「第1章 事件」は、被害者と犯人、それぞれの視点で、犯行に至るまでのプロセスが描かれる。「第2章 警察」は、事件発生から犯人逮捕までを警察側の視点で描く。刑事・合田雄一郎が登場するのは、この第2章、149ページから。そして下巻は「第3章 個々の生、または死」に丸々充てられる」。
 トールマン・カポーティの『冷血』を思わせる行きずりの無目的な殺人が扱われている。
逮捕された犯人にせまる合田刑事は、いくら供述をとっても犯意がみつけられない。犯行を構成する決め手となるもの、金とか恨みなどがなく、そのとき歯が痛かったとか、勢いでとか、目があったから、そんな供述しか出てこない。「合田は「司法の言葉」の限界に直面する。そもそも人間の行動に、合理的な根拠などあるのか。世間が理解できるような筋道など、本当に存在するのか」(評者)と自問する。こう自問する合田は、自己言及を深めていき、「人は「なぜ生きているか」を簡単に言葉にはできない。明確に表現しようとすると空虚になり、嘘くさくなる」(評者)。しかし、人は生きて、人は死ぬ。言葉で抽象化された意味を超えた「むきだしの生命」がある。その生の叫びがある。言葉を超えた存在、有ること自体の揺るぎなさ、ハイデガーが認識の哲学ではなく、存在の哲学を構想しようとしたのも頷けなくはない。
 たまたま大正期のアナーキスト群像を眺める日々を送っていたが、この「むきだしの生命」に縋りつこうとした人々であったのではないかと気づいた。この小説紹介が感興を催し、一戦交えようという気分になった。
[ 2013/01/20 11:34 ] Web管理室 | TB(-) | CM(-)


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。