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夜間中学その日その日 (270)   守口夜間中学 白井善吾

ドングリ拾い (2)
 「朝のウオーキングでマテバシイを拾ってきました。渋くないドングリですから、水につけてあく抜きしているこの中に入れても大丈夫ですね」集まったドングリ、バケツ2杯分にもなった。早く登校した夜間中学生、水の入れ替えをしている。水の色も濃い茶褐色から、ずいぶん薄くなってきた。


この日、理科の学習は、ドングリ団子の作り方の説明を行った。
遺跡の発掘で見つかった「謎の塊・クッキー」。成分を調べるとドングリでこしらえた縄文人のクッキー。日本でもドングリを食していた。地方に行くと、その作り方が伝わっている。
授業の終わりごろ、「先生、渋は抜けたと思います。もういいと思います。いつやりましょうか?」「明日、11月15日(木曜日)はどうですか?」「いいですよ」。「早く来れる人は午後4時30分から始めます。お手伝いお願いします」韓国で食してきたトトリ、ムッ(ドングリようかん)をクラスみんなでつくって、味わうことを推進してきた夜間中学生のオモニはこのように呼びかけた。
職員会議をしていた教室に4時過ぎ、夜間中学生が登校してきた。ドングリ団子のつなぎに、この粉使ってください。うるちの米の粉です。フライパン、片栗粉、道具や材料持参で登校してきた。
午後4時半、ミキサーが回り始めた。丹精込めてあく抜きしたドングリが「はい、1分30秒」声がかかると、スイッチが切られ、横で待受ける袋の中に移され、絞られる。コーヒー牛乳の様な絞り汁がしたたり落ちる。「豆腐作るのと同じ要領ですな」「するとこれがドングリのおからですか」「コーヒー豆をひいたんとおなじ色ですな」。「明日くる中学生にも食べてもろたらどうでっしゃろ?」「わしらが毒味してないのに、‥」。半信半疑で作業を進めている。
「これをもう一度、繰り返してください」とオモニが指示する。ドングリのでんぷんをできるだけ多く回収した。「ドングリおからはどうしますか?」質問が出た。「どんぐり団子をつくります」自信に満ちた返事だ。
しぼり汁をさらに目の細かい布で濾して、ドングリでんぷんを精製した。夜間中学生は、片づけをして、授業の準備に切り替えた。すべて片付いたのは5時30分。授業開始10分前だ。
「先生どうします。ここまでできるとトトリ、ムッはすぐできますが」。この夜間中学生は苦労したみんなに一口食べさせたいのだ。この日は補食給食のない日でもある。「時間をゆくりとって、明日食べてもらいましょう」。待ってもらって、「あす、トトリ、ムッを完成させましょう」と皆に伝えた。
11月16日、午後4時半、作業に取り掛かった。ドングリでんぷんをよくかき混ぜ、フライパンに入れる。中火で温めていく。焦がさないように撹拌する。粘りが出てきた。粘り具合を水を加え、調整する。「もういいです」平たい容器に移し、形を整え、冷ます。弾力が強い。「20~30分も冷ますと、もう食べられますが」、「補食給食の時間にみんな揃って食べましょう」。
この日は、大東市の中学1年生24人が交流に訪れる日だ。子どもたちとの交流が終わった、7時半過ぎ。教室に短冊に切った、トトリムッが運び込まれた。「ぷりぷりで牛のレバーのようですね」「純粋の100%ドングリでんぷんです」「味は無味無臭ですね」「これをつけて食べてください」と韓国風のたれが配った。「おいしい」「なかなかいけます」「お酒はありませんか」「生まれて初めて食べます」なかなかにぎやかだ。
蒸し上がったドングリ団子も、運び込まれた。この団子はドングリおからに片栗粉をつなぎに、しぼり汁で練り上げ、成型して蒸し揚げたものだ。きな粉をつけて食べた。「おいしい」「味は良いんですが、のど越しがよくありません」「先生、戦争中によく食べた、米ぬか団子。あれよりずっとまし」「こんなん食べられへん言うたら、食べるもんありませんわ」「味が贅沢になったんですね」ドングリ団子の味は賛否半ば、評価は分かれた。「家に持って帰って、子や孫に食べさせます」「よい経験させてもらいました」
11月19日月曜日。教室に入るなり、「おなか大丈夫ですか?便秘していませんか?」尋ねた。「全く問題ありません」「かいちょうですわ」返事が返ってきた。「先生、残ってませんか?これを食べたら、夜中に2度、行っていたトイレに、この日は一度も行きませんでした。これは薬です」ある夜間中学生このように言ってきた。
ドングリ拾いから学習が広がっていく。次はもう一つ別のドングリ団子づくりを行う。
[ 2012/11/29 09:14 ] 寄稿 | TB(-) | CM(-)


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