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日曜新聞書評欄簡単レビュー:三室 勇

今週も日曜日恒例の新聞書評欄から。

朝日――
アーチー・ブラウン『共産主義の興亡』(中央公論新社、8925円)、評者・保坂正康。著者は英国の政治学者で以前にソ連崩壊の火付け役を果たした『ゴルバチョフ・ファクター』(藤原書店、2008年刊行)という本を書いている。本書は、共産主義の誕生、成長、そして崩壊までを丹念に描き出し、20世紀の壮大な実験の報告書の感があると評者はいう。また、その記述は細部にわたって論理的、実証的であり、立場を超えて納得できる点が特徴的だと評している。なぜ共産主義は20世紀の1つの軸になり得たのか。「共産主義の魅力の1つは、教義における不可避性の強調」だと指摘している。英国共産党の元党員はそれが「えも言われぬ慰めだった」と証言したという。また「社会と政治を統制する道具としての共産主義制度の効率性」もあったと指摘している。その反面、この制度は、粛清、弾圧、投獄とも一体化していて、指導者間の苛烈な権力闘争も内在していた。こうした病的な体制は、崩壊へと進むことになる。当初あった国際共産主義運動は薄れ、共産主義体制に期待されていた理想空間の清新さは失われ、「凄絶な失敗という結果」になったと著者はいう。では現在の中国、北朝鮮、ベトナム、キューバなどの共産主義体制とは何かが問われるが、著者は、それらは「土着的革命」であり、ヨーロッパ共産主義運動とは異なるものだといっている。

宮地正人『幕末維新変革史 上下』(岩波書店、各3300円)、著者に会いたい欄。著者は厳密な実証的な手法を旨とする日本史家である。その著者が維新変革史という通史を書いたところに驚きがあるようだ。以前日経の書評で「学会の大御所である著者が満を持して送り出した物語的歴史学の大作」とあり、著者自身が意識した藤村の『夜明け前』への学問的オマージュとあったことから、興味を抱いた。著者は卒論テーマが明治維新で、その後、東大史料編纂所に入り、膨大な史料に出会っている。「非合理な攘夷から合理的な開国へ、という伝統的な見方を批判し、新たな通史を描いた」と冒頭で紹介されている。要は歴史には合理性が働いており、ペリー来航から西南戦争までひとつながりで、全体としては合理性があった。それを史料からも読み取れるということらしい。1つは日本の公権力のあり方で、鎌倉の頼朝以来、公武合体が続いていたこと。もう1つは、江戸の蘭方医が越中・高岡の兄に当てた書簡で、ペリー来航など素早く情報を集め送っており、こうした事態を注視していたことなどがあげられる。このあたりは『夜明け前』に通じるところだろう。幕臣であった勝海舟が広い視野を持てたのは、彼の能力を認め、書物を買い与えた渋田利右衛門という商人がいたことなど、司馬遼とは違った幕末維新物語が書けそうな話題がいっぱい詰まっていそうである。
[ 2012/11/18 07:50 ] 三室勇 | TB(-) | CM(-)


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