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夜間中学その日その日 (268)   守口夜間中学 白井善吾

ドングリ拾い (1)
近畿の夜間中学理科部会ではフィールドワークを年4回実施している。教室を出て、自然に触れ、学習を展開する。そんな目的をもって始まった、もう80回を超えるはずだ。
10月28日は大阪長居の自然史博物館植物園に集合した。不思議と雨の少ない行事で、これまで雨にあった記憶はない。しかしこの日は、あいにくの雨。

子どもの時、こんな行事に参加できなかったので、何をおいても参加するようにしています。ある夜間中学生は集合場所に30分前に来て、待っていた。
地下鉄長居駅の外に出ると雨脚は強くなっていた。雨の中高校生の陸上大会が開かれていた。放送が流れてきた。「先生、娘がここで国際大会があったとき、通訳のボランティアをしていました。どんなところか見せてください」一人の夜間中学生が言ったので、寄り道をして会場をのぞいた。「雨やけど、若い子や、元気に走っているわ」「うらやましい」。
植物園についた。傘をさして園内を回った。広葉常緑樹の下は傘はいらなかった。暗くて下草もほとんど生えていない。「地面がふわふわですね」「落ち葉が腐って土が肥えています」ドングリを拾いながら移動していった。道路に出ると、けっこうの雨が地面をぬらしている。「葉っぱで雨を受け止め、ゆっくり下に落とすから樹木の下は傘がいらないんですね」。花の香りが漂ってきた、「いい匂いですね。これはバラの匂いです」「私この匂いが大好きです」。モクレン、タイサンボク、オガタマ、神社に植えてある木だ。わからない樹木は名札を読みながら移動していった。
ヒイラギの前に来た。「きへんに春と書いて」「つばき」。「きへんに冬」は「ひいらぎ」。「ヒイラギの花も小さくてとてもいい匂いがします」「節分に玄関に飾る木ですね」「葉にとげがある」。では、「きへんに夏は?」「えのき」時間はかかったが、出てきた。「えのせ先生のえの、ですね」ここまではよかったが、つっこみがはいった。「きへんに秋もあるんでしょうね」「あるんやけど、忘れた。調べとってください」そんなことをいいあいながら、園内を移動していった。「カヤの実」「トチの実」は手に入れたが、沢山のドングリに到達するのに、カバンが重すぎた。「荷物を減らしましょうか」雨宿りを兼ねて、早い昼食を食べた。
雨はやみそうもない。ドングリを集める意義を確認するため、自然史博物館に入ることにした。
森ノ宮遺跡で見つかった貝塚の内容の展示を見た。3000年前の遺跡だ。哺乳類、鳥類、爬虫類、魚類、貝類、に交じってドングリが展示してある。縄文人が採取したドングリを蓄えておく貯蔵穴も展示してある。海産、淡水産そして森で手に入れた種類豊富な食料だ。「ドングリは一つと思っていましたが、こんなにいろいろあったんですか?」「集めるのは大変やったろうけど、けっこういろんなものを食べてたんですね」「渋いドングリをどうやって食べていたんでしょうか?」「クジラはどのようにしてとったんでしょう?」「この時代の人はどんな言葉をしゃべって、生活していたんでしょう?」疑問点が次々出てきた。
外を見ると雨が上がり、日がさしてきている。このまま手ぶらでは帰れません。「昔の森ノ宮の人たちに負けないように、拾いましょう」。
園内を反対から歩くことにした。マテバシイ、クヌギ、アベマキ、大型のどんぐりの登場だ。森ノ宮の縄文人になって、ドングリを集めた。「雨と晴れ、ドングリ拾い、収穫量もえらい違う」「コメは栽培していなかったから、食料が手に入りやすいところで暮らしていたんでしょう」
集めたドングリ、手分けして持って帰った。学校につくと午後4時をまわっていた。夜間中学生の力を借りて、ドングリ団子、ドングリようかん(トトリ・ムッ)づくりをやってみたい。ドングリが集まり始めている。
10月30日、31日の理科の時間だ。河内湾の時代(3000年前)の古地理図と、“森ノ宮の縄文人”が食したメニューを学習した後、ドングリを観察、採取したドングリの種類分けを行い、マテバシイを食べた。「結構いけますやん」「うまい」との声。「トトリ・ムッ」をよく学校に持参してくれた夜間中学生に、その作り方を語ってもらった。
11月に入ったある日の午後5時前、教室ではドングリを囲んで、ドングリの皮むきが始まった。網袋、鉄板、ハンマーが準備されている。網袋に入れてハンマーでドングリを割る。この方法は気が付かなかった。これならドングリが飛び散らず、作業能率がよい。さすが夜間中学生だ。ドングリから虫も出てきた。双眼実体顕微鏡も用意。丸々太った幼虫をレンズ越しに見ている夜間中学生。手を動かしながら、ワイワイ話が弾んでいる。
ドングリを小割にして、水につけた。水は茶褐色の水に変わった。あくが水に溶け出たからだ。水を入れ替え、色がつかなくなるまで、水を入れ替えるのだ。早くやってきた夜間中学生、撹拌して容器を傾け、水を変えている。「当時はドングリを袋に入れ、小川の水につけていたんでしょう」「袋を作るのもたいへん、ツルで編んだ目の細かい籠と違うやろか」生活経験がにじみ出た会話が展開されている。次はドングリをすりつぶす作業だ。さてどうする?

[ 2012/11/15 03:54 ] 寄稿 | TB(-) | CM(-)


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