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映写室「毎日がアルツハイマー」上映案内:犬塚芳美

    ―認知症の母親との日常をコミカルに描く― 

(もしも自分の親がアルツハイマーになったら、どうしたらいい?)。高齢化の日本で、子供として、ある年齢になった誰もが抱える恐怖です。ところがそんな修羅場を、軽やかに笑って潜り抜ける人が現れました。

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©2012 NY GALS FILMS

 <オーストラリアに住んで29年の>関口裕加監督は、一人暮らしの母親の異変に気が付く。最初に認知症を疑ったのは数年前で、何度もお孫さんに同じ本を送ってき始めたのだとか。そのうち、宛名の英語が書けなくなる。そしてアルツハイマーに気づき、もう一人ではおいておけず、日本に帰ってくる。二人で暮らし始めて2年半。認知症の母親との日常を、明るく、そしてユーモラスに長編動画にまとめた。
もともとは短編をYou Tube にアップした物で、累計20万人が観たという超人気動画なのだ。

 <母親の認知症は少しずつ進行する>買い物に行けなくなる。通帳がどこにいったか解からなくなる。トイレットペーパーが異様に減るのは、どうやら失禁の為の尿取りパットをこれで作っているらしい。自転車で走り回っていたのに、家から出なくなる。パジャマと服を混同する。そして、同じことを何度も繰り返す母親。3度目、4度目になると、たいていはここで、家族から(も~っ!)と泣きが入るものだけれど、この作品の場合、テロップでコミカルに「ダメだし」と入る。

 <チャップリンを愛する関口監督は>、こんな時も「クローズアップした人生は、辛いことだらけだけの悲劇だ。でも引いてみると、人生は喜劇になる」という言葉を忘れない。引く方法は人それぞれ。文字通り引いて、少し遠くから自分を客観視できれば何よりだし、監督の場合はそれだけでなく、カメラを入れて、娘だけではなく、映画制作者の視点でそんな日常を眺めてみた。すると修羅場になりかねない現実は、一瞬に、カメラを向けたくなるユーモラスな現場に豹変。

 <「なぜ母が何度もリピートするかといえば>、記憶がなくなる、言ったことを覚えていないからなんです。それと同時に、母にとって、リピートした内容がかなり重要なわけです。それは解かるんだけど、こっちにとって重要かどうかは又別問題。何度も聞かされている間に、これって、茶化しちゃっていいんじゃあないかと思いました。ただし、こういう状況って難しい。アルツハイマーはきちんと受け止めれば、底のない沼に落ちていきます。こういう作品を見ると、ふざけていると怒る人もいます。現実はもっと深刻だって。でも、悩んだからって何も解決しないんですよ。私お得意のギャグで切り返すと、母も一緒になって笑ってくれるんです。もうこれしかないですよ」

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©2012 NY GALS FILMS

 <こんな監督の母親だけに>、当の本人も只者ではない。医師に長谷川式で認知症の検査を受ければ、自分の年齢を忘れて、照れながら傍らの娘に「いくつだっけ?」と聞いてくる。「今日は何日?」と聞かれても、笑い転げて「あれ、忘れちゃった、ねえ、何日?」と、抜け目なく聞き返す。見るほうにとってはさすがに親子なのです。もともとこんな風に明るい人かと思ったら、認知症になる前の母親は完璧な優等生だったという。ところが彼女の夫はおおらかで、冗談が大好きな人だった。父親に似た娘もそう。それでも母親は、娘に普通の幸せを求め、結婚して大学の先生になって欲しいと願っていたのだ。でも肝心の娘は、フラッとオーストラリアに行ったまま、映画監督になって30年近くも帰ってこない。自分は優等生で何でも出来て真面目に生きてきたのに、奔放な夫や娘に振り回され、期待を裏切られ、思うように行かない人生だった。そう嘆いたこともあるのだろう。

 <「アルツハイマーになって>、やっと母親は色々な枷から自由になった気がする」と監督。姪の頭をたたいて、「人を叩くって楽しいね」という母親は、監督の言うようにアルツハイマーになって、自分の思うように生きればいいのだと、やっと自由を手に入れたのかもしれない。「そんなおおらかな母が大好きなんです。やっと母と解かり合えた気がする。アルツハイマーは神様が母にくれた贈り物のようにすら思える」と、自分が自由に生きてきたからこそ、おおらかに受け止める娘。

 <天性のものもあるけれど>、そういう強さは、まだ人種差別のきつかった1980年初頭にオーストラリアに行き、これでもかというほどマイノリティーの悲哀を味合わされたことも大きいという。それでも、向こうの虐めは日本のように陰惨ではない。平然と表立って差別されるから、負けずに自己主張して生きてきたのだ。そして念願の映画監督になり、1989年ニューギニア戦線を女性の視点から描いた「戦場の女たち」を作る。
 <その作品で、アン・リー監督に>「あなたはコメディのセンスがある」といわれ、その才能を如何なく発揮したのが本作。生まれ故郷の浜に帰り、監督もまた肩の力を抜いて、新しい境地に踏み出したのだと思う。母が晩年に娘に与えてくれた、最高のチャンスだったのかもしれない。おおらかな関口ワールド、「毎アル」ワールドに、ちょっと感染された。

この作品は9月8日から第七藝術劇場(06-6302-2073)、
       10月6日から神戸アートビレッジセンター にて公開
*なお、9月8日(土)には関口監督の舞台挨拶が予定されています。詳細は劇場まで。
[ 2012/09/05 23:53 ] 犬塚芳美 | TB(-) | CM(-)


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