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映写室 「プンサンケ」チョン・ジェホン監督インタビュー(後編):犬塚芳美

―分断国家・南北の境界線上を自在に行き来する男―

<昨日の続き>
―知らないもので、映画と現実の境界線が無くなるのですが、38度線の中には本当にこういう場所があるんですか?
チョン:今回色々な資料に当たって、研究しました。葦原のようなところは実際にあります。鉄城門もありますが、あんな風に棒高跳びのようにして超えるのは、現実的には不可能です。

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©2011 KIM Ki-duk Film. All Rights Reserved.

―キム・キドク監督の脚本に、あのシーンはあったのですか?
チョン:1箇所ありました。それをぜひ使いたいと思ったわけです。
―見せ所になる、躍動的なシーンですね。
チョン:ええ。でも撮るのが大変でした。
―ワイヤーとか使って実際に飛んでいるんですか?
チョン:そうです。ワイヤーを使いました。

―この作品のポスターのコピーに、「おまえはどっちの、犬だ」という衝撃的なものがありますが、韓国の人にとってもそういう思いがあるのでしょうか?
チョン:私自身で言うと、中にいた時には分断というのに無感覚だったと思います。中にいるとそうなのでしょう。韓国にいるより海外に出たほうが分断が見えてきますね。中にいると、解からないという事に対して、あまりにも知らなさ過ぎたと思います。そのうちヨン・ビョン島事件があって、ああ、まだ戦争中なんだなあと思ったりしました。

―この映画を見た韓国の人の意識の変化はどうでしょう?
チョン:意識の変化はどうでしょうか。韓国の人は皆映画を楽しんでみてくれました。重いテーマなので、皆にどう映るか、心配でしたが、重いテーマを受け取りながら、それ以上に楽しんでもらえたのは良かったと思います。よく聞かれたのが、本当にピョンヤンまで3時間で行って帰れるのかということです。韓国にいるとピョンヤンがすごく遠く思えるんです。それと低予算というのにも驚いていました。低予算というと、通常は芸術系でしか上映できないのに、20箇所以上で上映できたのは大きな成果ではないかと思います。これくらいの予算の作品が、これだけの数のメジャーな劇場で上映できたのは、おそらく初めてではないでしょうか。

―今度は日本で上映されるわけですが。
チョン:難しい映画だと思わず、楽しんでもらえれば嬉しいです。その上で、分断について、少しでも考えてもらえれば、有り難いなと。特定の思想的な人に向けたものではなく、すべての人に向けた映画なので。
―国内にいた監督がそうだった様に、韓国の若い人にとって、分断という言葉は遠いのでしょうか?
チョン:私は遠いと思います。
―北朝鮮の人にとってはどうなのでしょう?
チョン:この映画を撮るに際し、脱北者のインタビューをしたのですが、その人たちは韓国の実情をご存知ではなかった。だからこそ、同じ言語を持ちながら、脱北して来た韓国で、韓国に馴染めず大変な思いをしていると聞きました。60年間放れていた事でそうなったのでしょう。私自身は分断後に生まれていますから、北の情報の無い分断後の社会しか知らない。北朝鮮の若い人もそうです。お互いにお互いのことを知らないというのが実情でしょう。これから多くの方と交わることが出来ればいいなと思います。

―この作品のDVDを、プンサンケのように北に運んでくれる人がいるといいですね。
チョン:この映画を撮り終えた後ですが、ある新聞の記事で、こういう風に両国の間を運んでくれる組織があると読みました。ただし、38度線ではなく、中国を通ってだと思いますが。本当にプンサンケがいると聞いて嬉しかったです。

―脚本を書いた、監督の師匠でもあるキム・キドク監督は、この作品について何か言われましたか?
チョン:自分が想像した世界とは違うと、驚いてらっしゃいました。どう仕上がるか、気になっていたとは思いますが、撮影現場にはいらっしゃらなかったので、東京の試写で見てもらいました。私とスケジュールがずれていたのですが、まだ見ていないので絶対見たいと仰って、これを見る為に残って下さったんです。僕はもう緊張してドキドキでしたよ。裏切られたなあと言われました。
―嬉しい裏切りだったのでは?
チョン:(笑い)やっぱり若い監督が撮った映画だなあと仰いましたね。僕の映画だからと、僕がどう撮ろうと、口出しをされることは無かったです。
―さすがですね。ところで、この後どんな作品を撮りたいと思われますか?
チョン:年齢にあった作品を作りたいと思います。スピード感のある若々しい、アクション映画を撮りたいんです。70代になったら、アクション映画は作れませんから。私自身がまだ人生の深みを解かっていませんから、この年齢と立場で、イ・チョンドン監督やキム・キドク監督のような、世界観のある作品を作るのは無理がある。幼い子が背伸びして我が儘を言っているようなものです、自分の年齢にあった作品をまずは撮りたいのです。(聞き手:犬塚芳美)

<この作品の感想とインタビュー後記:犬塚> 
 監督の歌だという挿入歌のシューマンの睡蓮。あのシーンで監督と主人公が重なったようにも思います。感性の分野も含め、丁寧に独特のご自分の世界を話して下さり、省くところがありません。奇想天外な物語なのに、不思議なリアリティ。しかも作品に品格があって、楽しみながらももっと深いものを受け取りました。少し長いのですが、あの日の知的興奮を少しでも皆さんにおすそ分けできたらと。それにしても、躍進目覚しい韓国映画界。この頃深く感動するのは、韓国映画が多いのです。

この作品は、9月1日からシネマート心斎橋、
      順次京都シネマ、元町映画館 にて公開
[ 2012/08/30 06:04 ] 犬塚芳美 | TB(-) | CM(-)


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