ジャーナリスト・ネット公式ウエブサイト

ジャーナリストの取材記事、論考などそ掲載するブログ
ジャーナリスト・ネット公式ウエブサイト TOP  >  スポンサー広告 >  三室勇 >  日曜新聞書評欄簡単レビュー:三室 勇

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[ --/--/-- --:-- ] スポンサー広告 | TB(-) | CM(-)

日曜新聞書評欄簡単レビュー:三室 勇

今週も日曜日恒例の新聞書評欄から。

京都――
安田浩一『ネットと愛国』(講談社、1780円)、「本を語る」欄の取材記事。著者は、講談社の雑誌『g2』のvol.10で本書に引き続いて「ネチズム(ネット・ファシズム)は拡散する」を書いている。
 ネット右翼が街頭活動に姿をあらわしたものが「在日の特権を許さない市民の会(在特会)」だが、この活動の闇に斬り込んだのが本書である。「在特会」に集うのはどんな青年たちなのだろう。「正業に就き家族と同居しているような人は少なく、競争社会で足場の危うい人が多かった。自力で問題に向きあう力はなく、不遇な思いだけを募らせていた」。この著者の言葉に、なぜと思う反面、そうだろうと思ったという人も多いはずだ。
 在特会は、在日韓国・朝鮮人や中国人、日教組やメディアを諸悪の根源だと決めつける。その主張は、支離滅裂だが、明快だという。会員たちは、自分の不遇な思い、鬱屈を、在特会の攻撃目標に重ねて、攻撃することで晴らそうとする。そこには「愛国」も「思想信条」もないわけだ。自称1万人以上といわれている会員数もネット上で結ばれたもので、確かなものではない。最近は中堅幹部の離脱が目立ち、停滞気味のようだ。しかし、会の運営資金の多くは、善意の寄付で賄われているらしい。在特会にカンパし、それを支える人たちがいるということだ。「街宣はひどいが、主張は正しい」そうしたネット世論に支えられているとしたら、在特会が消滅しても形を変えて、でてくる。そのことのほうが恐ろしい闇だ。

毎日――
赤坂真理『東京プリズン』(河出書房新社、1890円)、「著者インタビュー」記事。
赤坂真理の9年ぶりの小説は、戦後日本の抱える問題を正面切って取り上げたものだ。それは著者の感じている、現代日本の生きづらさに向きあおうとした結果でもある。個人史と戦後史を重ね、母と娘の確執、天皇制、アメリカを突き詰めていく小説のかたちとなった。「戦後の問題は論理と感情を切り離せない。二つを一緒に扱えるのは小説でしか語り得なかった」(著者)。15歳の時、親の独断でアメリカ留学をする。1年間で帰国した挫折体験、この個人の「敗戦」の記憶がモティーフとなっている。
 小説の主人公は、40代半ばの作家マリとアメリカ留学中のマリが30年の時を隔てて交信する構成となっている。東京裁判の通訳をしている母親、母はなぜアメリカ留学をさせたのかが、小説のなかで問い返され、生き直される。そしてアメリカの学校での「天皇の戦争責任」をめぐるディベートで、「東京裁判」が再現される。留学生マリは責任を肯定する役割を担って、天皇制と向きあう。
 著者は、「戦争と今が地続きだと思って読んでほしい。戦争を忘却しようとして作った今のシステムを、相対化できないから何が息苦しいのか分からない、生きづらいと思うのです」。この時代の閉鎖感には、著者の指摘するように戦争責任を自らの手で問わずにきた日本、私たちの怠惰のツケがおそろしく大きな負債となって覆う現代日本社会を痛感させられる小説のようだ。
[ 2012/07/22 08:38 ] 三室勇 | TB(-) | CM(-)


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。